コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月4日付け

 さる経済専門家から「どんな経済活動も必ず代替方法を二つ、三つ確保しておくのが事業を安定化させるための鉄則です。日系人の多くは南銀時代の流れでサンタンデールだけに預金しているが、このご時世ですから、複数の銀行に置いておく方が万が一のためのリスク分散になります」との助言を受けた▼EUの金融危機が深刻化し、ギリシアに始まり、イタリア、ポルトガルと傷口が広がる様相をみせている現在、スペインに本社があるサンタンデールだけに預金するのは確かに得策ではないかもしれない。国内の大手銀行にも分散させるのが理想的な資産保全策だろう▼ブラジルの国内総生産が英国を抜いて世界6位になったとの報道にせっし、考えるところがあった。1位は米国だが、2位の中国と3位の日本が手を組めば実は世界最強の経済ブロックが形成される。日中関係は常にナショナリズムが刺激されて敵対関係が煽られる状態にあるが、明治維新の〃薩長同盟〃のようなもので、もし手を組めば世界の誰もが一目置かざるを得ない巨大経済ブロックとなる▼そこに、成長が続く資源大国たるブラジルが入ればさらに強力な〃黄金三角〃が形成される。金融危機の後処理が続く欧米経済は、今年以降もさらに下降を続ける流れにあるとも聞く。世界経済の比重がさらに新興諸国に傾くのであれば、日本は欧米偏重をやめ、新しい世界バランスを模索する必要がある▼〃戦後〃と同じ意味で〃震災後〃の日本は新しい世界観を持っていい。我々が銀行預金を分けてリスク分散するように、日本も米国偏重でない世界との関係を考えることを新年の課題としてほしい。(深)