デカセギ=少年検挙件数10分の1へ=人員でも4分の1に減少=警察庁統計から傾向分析=日本社会との共生進む

ニッケイ新聞 2012年1月19日付け

 警察庁サイトに公表された平成23年(2011年)上半期の『来日外国人犯罪の検挙状況』によれば、ブラジル人少年(14歳以上20歳未満)による刑法犯・特別法犯の検挙人員は55人で、前年同期比で20人も減少した。下半期もこのペースで推移すれば、最多だった02年(406人)と比べ、約4分の1にまで減少するとみられる。特に刑法犯の検挙件数で見ると、最多だった1999年に比べると10分の1にまで激減する勢いであり、ブラジル日系社会にとっては朗報といえそうだ。

 在日外国人少年全体で刑法犯の検挙件数を見ると、360件のうちブラジル人は53件で3番目に多い。ブラジル人の検挙件数最多は1999年の1492件で、それ以来、少年全体における割合は毎年トップを維持していた。すでに07年には559件まで減少していたが、金融危機の後、在日ブラジル人の激減を受けてさらに減り、10年上期は81件、11年上期は53件へと34・6%減となった。
 現状のまま3位のペースで推移すれば、昨年1年間の件数はピーク時の10分の1まで減少する可能性があり、この十年あまりで初めて、不名誉なトップの座を降りる可能性が強まった。
 犯罪が減少した背景には在日ブラジル人少年の人口自体が減ったことがある。ブラジル人の外国人登録者数は07年末に31万6967人とピークを迎えて以降、09年末に29万7456人、11年9月に21万5千人と3年間で約10万人も減少している。法務省が発表した登録外国人統計によれば、15〜19歳のブラジル人少年は10年末時点で1万326人。06年末の1万8150人から毎年約2千人ずつ減少している。
 ただし、11年上半期のブラジル人全体での検挙人員215人のうち、少年犯罪は55人と18・6%を占めており、手放しでは喜べない状況だ。来日外国人全体における少年犯罪の割合が8%であるため、明らかに多めの数字だ。
 ブラジル人少年の犯罪種別をみると53件のうち凶悪犯罪は1件のみで、窃盗が34件と半数以上を占めた。窃盗が前年同期比で20件減少したことで、全体の検挙人員数を押し下げた。
 さらに刑法犯の検挙件数を発生地域別に見ると、53件のうち中部管区(愛知、岐阜、三重、富山、石川、福井)で最多の25件、関東管区(神奈川、埼玉、千葉、茨城、群馬、栃木、新潟、長野)で22人と、集団地のある両管区に集中している。特に中部では刑法犯検挙件数の60%をブラジル人が占めた。
 帰伯児童支援プログラム『カエル・プロジェクト』コーディネーターの中川郷子さんは「件数、人員の減少を喜びたい」とコメント。「定住外国人の子どもの就学支援事業(虹の架け橋教室)の実施など、日本側の受け入れ体制が整ってきたことも減少の一因では」と分析する。
 「しかし、楽観視はできない」とし、「リーマンショックが子供達に与えた経済的、心理的影響は大きい。犯罪の減少イコール少年達の抱える問題が解決したとは言えない」と述べた。
 また、国外就労者情報援護センター(CIATE)の浅野嘉之専務理事は、「日本で一度罪を犯した少年はビザ取得が困難になり、強制帰国するなど再犯の可能性が減ったことも原因では」と話した。