南米三翠会=トメアスーの高松さん=森林農法の現状を講演=養豚を含めた形で促進

ニッケイ新聞 2012年1月28日付け

 農業、林業、畜産が合わさった森林農法で未来を切り開くトメアスー移住地——高松寿彦さん(としひこ、67、長崎)が22日にサンパウロ市のレストラン「美松」で行われた南米三翠会(三重大OB会、徳力啓三世話役)の会合で講演し、スライド写真を見せながらアマゾン農業の最新事情を説明した。同OBには15人ほど集まり、農学部卒業生が多いことから、専門的な内容の熱心な質疑応答が行われた。

 広大な面積に単一作物を植え付け、大型機械と大量の化学肥料を投入する技術の高い現代農業とは、ある意味、対極にあるのが自然重視のこの農法だ。「森林農法の畑には機械が入らないから人手が必要、中小の農業者に向いている。大農がやれば、それはそれで利益がでるだろうし、別の意味で大きな変化といえる」と高松さんはいう。
 この農法の最大の特徴は「土地を裸にしないこと」と強調する。とうもろこし、米、バナナ、マラクジャ、胡椒、モギノ(マホガニー)などを同じ畑に混植し、農業から林業に収穫物が移り変わる数十年が一つの周期となる。最後の林業の段階ではすでに下草が生えており、木材を切り出した瞬間から新たな農業周期が始まる。アマゾンという灼熱の気候に適応した永続性のある農業だ。
 OB会で農業技師の野口博史(ひろし)さんは、「サンパウロ州では不耕起農法で地力を維持しながら永続的な農業が可能だが、熱帯であるアマゾンの気候では林業を含めた形が求められる」と解説する。
 トメアスー組合の歴史説明の中で特産物アサイーの話になった時、モジ在住のOB浅海護也(あさうみ・もりや)さんは、「かつてアサイーは川沿いの天然モノしかなかったが、今では栽培技術が進み、モジでも作っている人がいる」と紹介した。
 高松さんはアクレ州でJICA専門家として森林農法を指導し、養豚を含めた形を薦める。「豚舎には通常コンクリート床を敷くが掃除や匂いが大変。鋸クズと自然塩、土をある割合で混ぜて70センチぐらい敷き詰めると、匂いが全くなくなり蝿すらわかない。すぐに発酵が始まり、堆肥どころか豚の最上級のエサになる」という。
 サンパウロ州では悩みの種の葉きりアリ(サウーバ)の被害も森林農法の畑ではさほどないという。「生態系のバランスが取れていると特定の菌や生物が大発生しない」という。
 高松さんは15歳の時に移住を決意し、三重大在学中に学生移住連盟派遣によりサンタレンで実習、先輩の影響もあって、73年に最後の移民船「日本丸」でトメアスー移住地に入植した。