コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年2月2日付け

 日本のテレビコマーシャルで女優が「世の中、バカが多くて疲れません?」と視聴者に向けて語るものがあった。間もなく「バカ」が「おりこう」になった。というのも「失礼だ」と苦情があったからだという。自分のことを言われたと思ったのだろうか。自覚しているだけましだが、馬鹿の上塗り—と失笑した▼日本各地の学校で二宮尊徳像が撤去されているというニュースを読んだ。戦前に建立されたものが多く、老朽化が主な理由なのだが、補修に否定的な〃声〃が多いことでその歴史を終えるようだ。「子供が働くのはおかしい」「戦前教育の名残」「本を読んで歩くと危ない」▼これが教師や父兄から発せられているのだから全く疲れる話だ。一方で「質素倹約や勤勉に学ぶべきものは多い」と遺徳を伝える冊子を子供に配る例もあるというので救われる。そういえば、ブラジルにも尊徳像があるのをご存知だろうか。文協庭にひっそりと立っている▼そもそもは、尊徳を生んだ神奈川県が神奈川協会に送ったものだが、その誘致事業の責任者だった幹部による会公金の不正取得疑惑が発覚。会館を売却するまでに発展したのだからブラックジョークである。居場所を失った尊徳さん、文協まで歩を進めたわけだ▼関係者によれば、裁判は順調に進んでいるようで3月の総会で会員に向けて進捗状況を報告するとか。こちらも不正会計問題で片膝をついた長崎県人会だが、活動も盛んになり、9月の50周年に向けて見事に立ち上がっている。尊徳いわく「誠実にして、はじめて禍を福に変えることができる。術策は役に立たない」とか。(剛)