「デカセギに質的変化」=大阪商業大 古沢教授が指摘=新しい日系人活用を提言

ニッケイ新聞 2012年2月9日付け

 「デカセギに肯定的な質的変容が生まれています」。3度目の来伯をして調査をしている大阪商業大学の総合経営学部、古沢昌之教授(46、大阪出身)はそう強調した。在日日系人、在伯日本進出企業、USP日系学生、日本におけるエスニック・ビジネスの4点において「日系ブラジル人の活用」を調べており、それぞれが日系社会にとって興味深いテーマといえそうだ。
 「日系人を媒介として、進出企業と日系社会が相互利益を享受するような関係にならないか」という視点に基き、かつては「日系人は頼もしい味方になるべき存在」と見られつつも、人材資源管理が効果的でなかった面があったのではないか、との疑問も抱いているという。
 日系社会は世代交代が進む中で、日系人アイデンティティが薄れ、日本語能力が低下する傾向が強かったが、デカセギという大集団により、それに歯止めがかけられている可能性があることを強調する。
 同教授のUSP日系学生への調査で明らかにされたとおり、年齢は同じでも世代が進むほど日本語能力は低下する傾向がある。さらに、「通常は混血ほど同化して日本語能力が低下するが、デカセギにその調査をしたところ、純血と混血で日本語能力の差が縮まっていることが分かった」という。これを古沢教授は「質的な変容」と名付けている。
 従来は「日本で就労しても単純労働ばかりで技能を修得できない」とされてきたが、同調査によれば、デカセギ帰伯者をホワイトカラー(管理職)として雇用した経験がある当地の進出企業は半分弱を占めるほどであり、日本就労によって技能を高める「新しい傾向」がみられると指摘している。
 特にリーマンショック以降、職を失った10万人が帰伯した結果、残った約20万人の在日ブラジル人には以前よりも定住志向が高い、日本企業から必要とされる人材、日本社会に適応した層が集まっている傾向があると見ている。
 この3年間の変化は顕著で、日本各地には在日外国人支援のNPO法人が生まれ、「日系人同士の結束が強まっている」と指摘した。