帰化すれば年金もらえる?=農業経験者には優遇措置も=古賀弁護士「証拠あれば」=INSS事務所に聞く

ニッケイ新聞 2012年2月25日付け

 「一度も年金を払っていなくても、農業経験者だったり、帰化すれば最低賃金分の年金をもらえると聞いた。本当か」—。こんな問い合わせがサンパウロ市近郊に住む男性(82)から編集部に寄せられた。社会保障省(Ministerio da Previdencia Social)のウェブサイト、INSS事務所に取材したほか、本紙6面で掲載している『ニッケイ法律相談』でおなじみの古賀アデマール弁護士にも聞いた。

 社会保障省のサイト(www.previdencia.gov.br)によれば、「老齢年金」(aposentadoria por idade)は都市労働者の男性65歳以上、女性60歳以上、農業従事者は男性60歳以上、女性55歳以上から、受給することができる。
 1991年7月25日以降に積み立て始めた都市労働者が年金を受給するには、最低180カ月間(15年間)の積み立てが必要だ。同期間、農業に従事することでも受け取る権利が発生する。
 91年7月24日以前に年金支払い登録をした人で、91年、92年に受給できる年齢に達した場合、それまでに60カ月積み立てたという証明があれば受給できる。93年の場合は66カ月。以降、必要な積み立て期間が6カ月ずつ増える(HPで確認可)。
 従って、過去に規定期間以上、農業に従事していた場合、INSSで申請すれば受け取れる可能性がある。もちろん〃証拠〃の提示が必要だ。
 古賀弁護士によれば「例えば農場を経営していた場合は権利書、農地で働いていたなら給料を受け取っていたという証明書などがあれば、それが証拠書類となるでしょう」という。
 実際にこの方法で2年前から年金を受け取っている70代の戦後移民がいる。マイリンケで農業を約10年やったというソロカーバ在住の男性は「年金を支払ったのは3年のみ。田舎だと申請して受け取りやすいと聞き、サンロッケの組合の弁護士に依頼し、書類も用意してもらった」と話す。手続きから受給まで2年以上かかったという。
 「帰化すれば—」という話についてはどうなのか。
 サンパウロ市セントロにあるINSS事務所に取材すると「一度も支払ったことがないのに、ブラジル国籍に変えるだけでもらえる、ということは基本的にはない」と断言した。
 ただ、年金ではないが高齢者や障害者に対する特別恩給「BPC-LOAS」という制度がある。
 高齢者なら65歳以上で、何の恩給も受け取っていない、なおかつ家族一人あたりのひと月の収入が最低賃金の4分の1以下である場合に適用される。
 ただしINSS職員によれば、この恩給を申請する権利があるのはブラジル国籍を持つ人のみ。つまり、日本人であっても帰化し、条件が揃えば受けられる可能性がある。
 「いずれにしても年金制度は煩雑で様々なケースがあるので、受け取りたい人は一度INSSに行って聞いてみることが先決」と古賀弁護士は話している。
 問い合わせは電話(135)、受給申請に関する相談は、ウェブサイト(www.previdencia.gov.br)で申し込みを行い、日時を予約できる。