コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年2月28日付け

 首相が沖縄を訪問し、仲井真弘多知事と普天間基地移転などを話し合ったが、この課題はとても難しい。自民党が政権の座にあった頃からの難問だし、とてものほどに一朝一夕に解決し手打ち式とは行くまい。まあ、先の宜野湾市の市長選挙で自民と公明推薦の保守派・佐喜真淳氏が革新派を破り当選したので首相としても取組み易いと見たのだろうが、事はそれほどに簡単ではない▼佐喜真市長は、元県議で名護市辺野古への移転を容認していたし、仲井真知事も強く支持しており、ちょっぴり状況は「好転」してはいるが、米軍基地に猛反対の空気が濃厚であるのも、否定はできない。日本にある米軍基地の70%超が沖縄に集中している事実は確かに重い。海兵隊の兵士らの相次ぐ事件もだし、軍用機の墜落などの惨劇も多い▼このような厳しい環境と住民感情を思えば、普天間を始めとする米軍基地の「県外移転」やハワイなどへの「外国へ」が力を持つのは、当たり前なのである。こうした沖縄の人たちへの説得は以前から続いているし、沖縄の開発を進めるための振興策もあり多額の予算も組み観光化と産業への支援を強化してもいる。ただ、日本とアジアの安全保障の視点からすれば、沖縄の地理的な位置が軍事基地として最も適切な場所という地政学的な見地の大切さも忘れてはいけない▼こうした多角的な観点からの解決策を見い出さないと、沖縄の基地問題はいつまでたっても平行線を歩むしかなく、政府と沖縄が譲り合い「妥協」しながらの道を探るしかあるまい。普天間基地の移転は難しいけれども、必ずや明るい光が—と期待したい。(遯)