コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月2日付け

 「ブラジルの本当の新年はカーニバルが終わった後に始まる」とのラジオのコメントを聞いて笑ってしまった。まさに先週からサンパウロ市長選挙に関する様々なニュースが噴出しはじめた▼「ブラジルの命運はサンパウロ市長選で決せられる」。セーラ元サンパウロ州知事はそう高らかに自らの出馬を宣言した。このままではPSDBの牙城たるサンパウロ市までもPTの軍門に下るとの危惧を、セーラ氏を推す勢力は持っている。今回の市長選で組まれた体勢と、選挙結果が2年後の大統領選を大きく左右するとにらんで、同氏は出馬を決意した訳だ▼セーラ氏の出馬を「テルセイロ・トゥルノ(大統領第3次選)」だと評する声もある。2年前の大統領第2次選でジウマ氏とセーラ氏が聞き苦しいほどの舌戦を繰り広げた。あの時に、ジウマ陣営内で最後の大揺さぶりをかけたのが、避妊合法化を拒絶するエバンジェリコ(新教)勢だった▼漁業大臣をエバンジェリコ派に先日入れ替えたのは、PTが推すハダジ候補に同派を取り込むための工作だと言われている。つまりPTは国政を挙げてサンパウロ市長選に勝つための布陣を組んでいる▼ただし、PSDBも一枚岩ではない。セーラ氏出馬で、同党のミナス勢にはアレシオ・ネーベス上議の大統領選出陣が遅れると悔やむ声も強い▼極めつけのニュースはチリリッカ出馬だ。2年前に全伯最多の135万票を集めた怪物〃道化〃だ。セーラ氏とハダジ氏の舌戦を聞いて、どちらにも投票したくない市民の反対票がチリリッカに集まる〃漁夫の利〃戦略を狙う。さっそく「サンパウロ市はシルコ(サーカス)じゃない?!」との悲鳴のような投書がエスタード紙に出ていた。(深)