コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月27日付け

 金王朝の3代目は、まだ29歳と若いが、朝鮮人民軍最高司令官であり大将に就任と中々に偉い。母は日本にいたし、本人も訪日の経験があるらしいけれども、この3代目はとても手強い。政治権力を完全に掌握したのかは不明ながら—と「謎」に満ちているけれども、初代の金正日氏生誕100年を記念して「衛星」を打ち上げると公表しアメリカを仰天させ日本も韓国もおろおろするばかり▼「輝ける指導者」になってから日は浅いが、米と核政策の転換やミサイル発射も停止すると合意したばかりなのに平和利用のために「衛星」発射なのだから世界の国々がびっくりするのは当たり前である。アメリカ政府は猛反発し、韓国の李明博大統領は、昨日からソウルで始まった核安全保障サミットで米中ロ首脳と「衛星阻止」と会談し、日本も北朝鮮の「衛星」対応に追われている▼田中防衛相は、既に破壊措置命令を発令する意向を固めている。「衛星」が日本領域に落下や着弾する事態に備え沖縄の石垣島などにパトリオット(PAC3)を配備し、日本海にもミサイル防御の装備を完備したイージス艦を展開し、首都圏の防御にあてる方針で安全保障会議(議長・野田首相)も開く。と、天下がひっくり返るような騒ぎになっている▼この発射司令は、金正恩氏が命じたものだろうが—こんな重要な政策がいとも簡単に決まるところに北朝鮮の「怖さ」がある。軍司令官になってまだ3カ月だが、軍部の幹部らの粛清も2桁に及び迫撃砲で処刑し「髪の毛1本も残すな」の虐殺報道もあるし、3代目はやはり手強い。(遯)