再入国禁止期限はいつ?=今月、帰国支援から3年=帰伯日系人から疑問の声=担当領事「本省からの連絡ない」

ニッケイ新聞 2012年4月12日付け

 2008年の金融危機以降、日本で大量失職したブラジル人のうち約10万人が帰伯を余儀なくされた。当時の厚生労働省はこうした日系人への〃帰国支援〃として09年4月から1年間にわたって、「原則3年間」を再入国制限とし、希望者に1人30万円(扶養家族には20万円)の旅費を給付する「日系人離職者に対する帰国支援事業」を行なった。今月で政策実施からちょうど3年間が経つ。

 派遣会社などを営む本紙読者から「4月の時点で3年間なのか、それとも各人が帰国した日から数えて3年間が訪日禁止なのか」と数え方の解釈に関する問い合わせが何件かあった。
 「毎日のようにデカセギ希望者から問い合わせがきている」という。そこで赴任したばかりの在聖日本国総領事館の査証斑、植田敏博領事に話を聞いてみた。
 帰国支援を受けて戻った人は「日系人の身分に基づく再入国は認めない」という条件が付されており、09年3月26日付け本紙の記者の眼コラム「帰ったらデカセギじゃない!?」を先駆けに、4月中には東京新聞、TBS、毎日新聞、愛媛新聞のほか米国のNYタイムスからも「二度と再入国できない印象を与える」と連続した批判を浴びた。
 静岡県浜松市の鈴木康友市長も「日系人として再入国できないのは問題だ」と記者会見で意見をのべ、ブラジルのカルロス・ルッピ労働大臣(当時)が「施策の無効化」を求める公文書を送るまでに発展したのは記憶に新しい。
 これを受けて、日本政府は5月11日に「再入国禁止期間を3年を目処にする」と発表をした経緯がある。09年10月の厚労省広報によれば、少なくとも1万5千人以上が同支援を受けた。
 「帰国支援を受けた日系人はいつから再入国できるのか」との問いに対し、植田領事は個人的な意見とした上で「法務省と厚生労働省のスタンスがまだ決まっていないので、私から具体的な政策をお伝えすることができない。それに対してなんら本省から連絡はなく、今のところ政策の大きな変更はないと了解している。だから帰国支援を受けた人が今ビザ申請しても下りない」と述べた。
 共に来社した中山雄亮副領事にも「解禁に向けた動きはあるのか」と尋ねたが「外務省からの正式な話はまだ来ていない」と同様の返答を繰り返した。また、東日本大震災の影響により「どういう形で再入国の話を進めていくかは相互的検討がいると思う」と話した。とにかく「何も指示が来ていない段階」と繰り返し「正直問い合わせは来ているが、『何も(外務省から)来ていないですよ』と返事をしている」と語った。