コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年4月20日

 あの圧力鍋爆弾で大騒ぎになったボストンには「心臓破りの丘」という難所があり、多くのマラソンの選手らが悲鳴を上げる。そんな急坂を苦にもせず走り抜けた山田敬蔵選手が優勝し、田舎の寒村も大喜びしたものである。筆者はまだ子どもの頃だが、あれは昭和28年のことであり、日本のスポーツ選手が外国人を破ると国民も一緒になってバンザーイと叫んだりした▼この鍋爆弾テロで3人が死亡し、2万数千人が参加したボストン・マラソンも台無しになったが、あのブッシュ前大統領が「新しい戦争」と語った2001年の米中枢テロ以来のことであり、オバマ大統領らは危機感を強くしている。FBIや地元の警察では、犯人らしい人物を写した映像を発見しているが、外国人なのか米国人なのかも不明であり、テロの真相は謎が多い▼と、これだけでも大事件なのに、オバマ大統領宛の郵便物に猛毒リシンが入っていたのが判明し、これは犯人ポールを逮捕したが、こちらも犯行動機がはっきりしない。リシンはヒマの種から抽出した毒薬であり、致死量は極めて高い。今から30数年前にロンドンでブルガリア人のウラジミール殺害事件があり、検死したら遺体の中にリシンが発見され、KGBの犯行かともされた▼このリシンはウイッカート上議の郵便物でも見つかっているが、逮捕されたポールの動機は、どうもはっきりしない。FBIでは、爆弾テロとは関係ないとしているが、このリシン送付の怪は不可解としか申しようが無い。圧力鍋に火薬を入れてのテロもだが、米政界トップに劇薬郵送とーこの大国は謎に満ちている。 (遯)