コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月27日付け

 キッコーマンがブラジルのシェフらを日本に招き醤油工場やワイナリー、様々なレストランなどを訪れたことは既報の通り。そのなかで日本食レストランのオーナーが「日本製ワインがあることを初めて知った」と取材に答えているのを知り意外に思った。というのも本人はワインに造詣が深く、今回6度目の訪日というからだ▼日本人であれば、ぶどうの産地、山梨・甲府産を耳にしたことがあるはずだ。11県に40を超えるワイナリーがある。「日本=酒」というイメージが強すぎるのだろう。同様に、ブラジルに日本酒があることを知らない人は多いだろうから、驚くに値しないかも知れない▼しかし今回のニュースは—特に地元で—驚きをもった喜びで迎えられたようだ。世界400以上のワイナリーから出品された5千を超える銘柄を品評したコンクール「トップテン2012」の白ワイン部門で、サンジョアキン農協の『マエストラーレ・インテグルス2010』(Maestrale Integrus)が見事栄冠に輝いた(7面詳細)。日系コロニアの作ったワインが世界レベルに達し、ブラジル代表といえるものにまで成長した。同農協がワイン生産に乗り出し10年目の快挙▼地元で—と書いたのは、ワイン作りに取り組むことに懸念を示す一世らもいたと伝え聞いたからだ。ヨーロッパ系移民の独壇場に乗り込む蛮勇への心配もあったろう。それを跳ね飛ばす結果になったのではないか。関係者には拍手を送るとともに、これからも研究を重ねてもらい、日系のイメージをいい意味で壊す「SANJO」ワインブランドの名を高めていって欲しい。(剛)