移民史料館=森口イナシオ氏が運営委員長に=援協元会長の手腕買われ=副委員長には西尾弁護士=「まずは現場の声聞きたい」

ニッケイ新聞 2012年5月9日付け

 元援協会長の森口イグナシオ氏(77、二世)が先月1日、ブラジル日本移民史料館の運営委員長に就任した。2007年から4年間、日伯援護協会の会長職を務めた手腕や人脈、信望が評価され、文協理事会の要請を受けた形だ。南米銀行法務部に36年間勤め、現在文協法務委員の西尾ロベルト副委員長(69、二世)が副委員長としてサポートする。山下副委員長は「百周年を過ぎて史料館の存在感が高まり、色々な方面から提携の話が増えている。二人の力が必要」と話している。

 同史料館は移民70周年の記念事業として1978年に設立されたもので、文協ビルの7、8、9階に位置する。日本移民の記録を残し、後世およびブラジル社会にその歴史を伝えるという使命を掲げる。展示面積は1592平方米。物品約5千点、日記、本や新聞など文書類2万8千点、写真1万点を所蔵する。
 山下副委員長は「USPや海外移住資料館(横浜)と提携が進んでおり、所蔵着物の展示会の申し入れもある」と関心の高まりを強調する一方で「史料の保存・管理や設備の修繕に充てる資金が不足している」とし、森口氏が病院経営で培った経営力や人脈による組織活性化に期待する。
 就任の挨拶に来社した森口委員長は「今後の道筋を決める上でまず必要なのは、実際に活躍している人の声」と、史料館の運営などに携わるボランティアの意見も取り入れ、方針を練って行くとした。
 また、問題点として「史料館と分からない外見なので、目につくようにする必要がある。存在を知らせ、行ってみたいと思えるような取り組みが必要」と力を込めた。
 そのほか、日本人移民の入植地にある複数の史料館とも提携し、史料の所蔵館を探せるシステムの構築や、交換展示なども検討予定だ。
 西尾副会長は「こうした運営の経験はないが、日本文化の保存のため、法的な面で是非ともお手伝いしたい」と話した。
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 開館時間は火〜日曜日の午後1時半〜5時半まで。現在は、8階の斉藤宏特別展示室で「半田知雄展」を10日まで開催中。入場料は大人6レアル、子供・学生は半額、5歳以下・65歳以上は無料。今年3月末に開設したサイト(www.museubunkyo.org.br)では、写真や展示品の一部も閲覧できる。