コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2012年5月10日付け

 錦鯉品評会に参加した渡部史朗さん(74、山形)=サンパウロ市=は鯉を愛して30数年。「生き物は大抵喧嘩をするし餌を取り合うけど、鯉は絶対喧嘩をしないし、弱いものいじめもしない」と語る。
 コラム子の生まれ故郷は「鯉の町」と呼ばれ、学校や民家の多くが池や川に鯉を飼っていた。子供の頃よく鯉を眺めてを過ごしたが、昔の記憶を辿っても、争う鯉の情景は残っていなかった。
 姿や色の美しさもさることながら、こうした習性も鯉が愛されるゆえんなのかもしれない。渡部さんは「人間も鯉の気持になったらいい」と、一日に何度も鯉を拝んでは心を落ち着けるという。
 養鯉にも、美や調和を重んじる日本らしさが溢れている。今、ブラジルにも増えつつあるという愛好家の間にも、養鯉を通して日本的精神が浸透していくことを願う。(阿)