コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年5月11日付け

 「政治という妖怪」は素人には、わからない。真っ黒が純白になり、真っ白が一転し黒に変じる不可解な世界なのである。民主党の常任幹事会が、小沢元代表の党員資格停止処分を解除したのも、摩訶不思議な決定である。一審で無罪判決だったので「処分解除」となったのだろうが、その翌日には検察官役の指定弁護士3人が控訴を決めたのだから—世の中の人々は「どういうことなの?」と混乱する▼ところが、民主党は野田首相が「幹事会が決めたことなので」と歯切れが良くない。しかも—「控訴されても、処分を解く」とまで決めたのだから、びっくりする。日教組の幹部から政界入りした輿石東幹事長は、小沢氏に近い。そんな民主党にも、しっかりとした意見の持ち主はいる。前原誠司政調会長がその人で「控訴かどうか決まるまで処分解除は待つべきだ」と主張したが、輿石幹事長の豪腕に押し切られた▼勿論、自民や公明など野党は、小沢氏の証人喚問を要求しているが、これも今のところ無しの礫である。いや、こんな野党の動きもだが、これだけ世の中を騒がせたのだから—その政治的・道義的な責任は大きい。司法的な闘いもだが、国会や国民に対しても「陸山会事件」についてきちんと説明し、納得をしてもらうのが政治家としての義務でもる▼この事件では、小沢氏の秘書3人も1審有罪であり控訴しているが、一般の庶民からすれば目が飛び出るような「カネ」が、いとも無造作に行ったり来たりなのも、素人の理解を超える。小沢氏の言う政治改革もだが、今、大切なのは「政治に明るさ」をり戻すことが第一ではないか。(遯)