コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年5月16日付け

 「金がないと人は集まらない。団体も同じ」。理想や主義はさておきコロニアを見ていると正論だなあと思う。しかし拝金主義を忌み嫌う精神性を持つ日本人はこうした本音を言わないのが常。発言の主は…ご存知—天野鉄人氏(本日付7面)▼「総領事が一平卒なら私は将校」「日本政府に数十億の金を出させる」「ブラジルは日系人が主役になるべき」などかつての迷言のなかでも上品なものを並べてみた。そんな〃天野節〃で100周年前のコロニアを翻弄してきたが、冒頭の発言もご自身を省みてなのか、リベルダーデに所有する土地の譲渡をちらつかせてのこと▼しかし2年前に約1400万レアルで売却。利子だけでもすごい金額だろう。現在住むピニャール移住地に武道館も建てた。「頼むから使って」と叫び声を上げるのも分かる。ただ大和魂を継承する場に—とジャパンセンター建設を提唱していたにも関わらず、売った相手は中国人…。それは構わない。物を言うのは人ではなく金なのである▼さて。昨年末の100万レアル基金設立の提案から、聖南西文化体育連盟(UCES)は4度にわたり会合を開いてきた(再度、冒頭発言ごもっとも)。「預金の2倍の利子をつける銀行はない」と幹部が反対派を説得したように、こんな美味い話はないだろう。「遺言まで書いておく」というのだから直のこと一安心▼と、ここまで書いてきたが、実現、運用できれば、天野氏の名はコロニアに残るだろう。ブラジルを変えるのはともかく、コロニアを聖南西から盛り上げることは間違いなくできる。UCESとお騒がせ男のこれからが楽しみになってきた。(剛)