コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年5月17日付け

 ファヴェーラを辞書で見ると「貧民窟」とあり、サントス港に着いたころには「危ないから近づくな」と注意されたものだが、今も貧しい人々が暮らしており、その意味では残念ながら昔とちっとも変わっていない。しかも、リオの麻薬戦争に見られるように犯罪の巣窟になっている。警察と対立する密売人が多いアレモンとロッシィーニャには7万人もの住民がおり、抵抗も激しく容易に屈服しそうにもない▼リオはコロンビアなどから流入したコカインを欧米に密輸する中継地として注目されたのだが、すぐに密売組織が膨れ上がりコカインやクラックを吸引する市民が急増し今やリオの街やサンパウロも「麻薬王国」となってしまった。こうした麻薬関連の報道は、テレビを始めマスコミの記事に溢れているが、このような事態が長引けば、あの「阿片戦争」をも想起せざるをえない▼勿論、ファヴェーラの住民がすべて凶悪な犯罪人ではなく、麻薬に手を染めるのはほんの僅かにすぎないけれども、悪の温床は小さいうちに刈り取るにしくはない。しかも、こうしたスラムに居住する住民が、年々、増えているのにも目を向けたい。国勢調査によれば、この貧窮の街に1140万人が暮らしており、人口の6%に相当するそうだ▼調査は語る。住民4万人超の貧困街が10カ所。ベレン圏では人口210万人のうち110万人がファヴェーラで暮らしいる。大サンパウロ市圏でのファヴェーラ人口は216万人と巨大化しているし、クバトンは42%の住民が貧民窟での悲惨さである。東北伯の困窮家庭救済もだが、もっとファヴェーラ対策を—である。(遯)