時間短縮より料金が大事!?=JBAC査証センター=1カ月の処理60件のみ=総領事館への申請は1千件

ニッケイ新聞 2012年5月29日付け

 株式会社JBAC(中司竜太代表)が在聖総領事館(大部一秋総領事)の委託を受け、4月9日からサンパウロ市パウリスタ大通りの「在サンパウロ日本国総領事館査証申請センター」(以下センター)で査証発給業務の代行を始めているが、開始1カ月の処理件数わずか60件。依然総領事館も業務を行なっており「どちらで申請しても審査に差はないから、やっぱり皆安い方に行く」と某旅行代理店社員は話す。関係者にその評価を聞いてみた。

 まずJBAC社に質問をぶつけたが、中司代表からの回答は「今件の取材につきましては領事館が全て対応を行うとの事でございまして、私にはお答えできる権限がございません」というものだった。
 これについて総領事館査証班の植田敏博領事は「センター独自の事業ではないため、こちらで答える方がいいと判断した」と説明した。
 同領事によれば、4月9日から5月8日までの1カ月間における申請数はセンターが60件、それに対し同総領事館では1千件だった。
 両施設における数値の大幅な開きに関しては「現在分析中」、今後申請数を増やすための対策を採るかとの質問には「現在検討中。出来るだけいいサービスを提供できるようにしたい」と話すに留めた。
 もともとは、査証発給業務にかかるサービス改善・発給日数の短縮化などを目的に2月22日に同センターに窓口業務を完全委託し、総領事館の方の窓口は閉める予定だった。
 ところが日系旅行代理店の激しい反対に遭ったため見合せ、1カ月半遅れで開始したものの、同総領事館も従来通りの窓口を維持するという「折衷案」でのセンター開設の経緯がある。
 両施設における申請数の差について日系旅行代理店に意見を求めたところ「業者でセンターを利用している話はあまり聞かない。主に急ぎの旅行者が利用しているのでは。旅行者の多くはまだセンターの存在を知らない」と話し、申請数の少なさはその周知が進んでいないことにも起因していると指摘した。
 同センターでは平日は毎日申請・受け取りが可能で発給日数も最短1・5日と早い。ただし約200レアル(うちサービス料139・9レアル)が徴収され、総領事館なら査証代61レアルのみと値段の開きがある。
 代理店としては総領事館に窓口を維持してほしいのが本音。旅行者が直接センターに行くと、手数料の収入がなくなってしまうからだ。
 関係者の一人は「この数字じゃJBACは採算が合わず職員の給料も払えない。そのうちなし崩しにセンターに移行するのでは。そうなったとしてもサービス料は何とかしてもらいたい。これからどうなるのか疑問」と当惑した表情で語った。