福島原発にデカセギ?=放射能汚染物の撤去に=伯政府が「不満」表明=ネット上では賛否両論

ニッケイ新聞 2012年6月16日付け

 福島第一原発から20キロ圏内でがれき撤去などを行う作業員として派遣会社に在日ブラジル人約20人が登録されたが、在東京ブラジル大使館が政府としての「不満」を通達したことから、作業員の派遣が撤回されたと両国のメディアが報じている。この対応と顛末に関して、日伯両側で賛美両論が渦巻いている。

 発端は、先月31日に放送されたグローボTVのニュース番組だ。報道によると先月、在日ブラジル人向け求人情報専門紙「ジョルナル・デ・エンプレーゴス」に募集広告が掲載され、一日2時間、日給3万円で一日の食費も支給するという破格の条件だった。
 作業には防護服を着用、毎日医師の身体検査を受けるというもので、「被曝から症状が出現するのは10〜20年後のため募集人員は45歳以上のみ」。通常は日本人がしている作業であり、もし派遣されていればこの作業に従事する外国人としては最初となる見込みだった。
 このニュースを受け、6月1日付アゴラ紙は同様の内容を「ブラジル人が日本の有毒なゴミを撤去」という見出しで報道。「有毒な」という単語を強調し、否定的な見方を全面に押し出した。
 しかしその後、募集広告を出した大阪市の人材派遣会社「セルテック」が作業員の登録を撤回したとの報道が出た。
 日本の各報道によれば、募集広告掲載後に同社には日本人、ブラジル人両方から抗議の電話が殺到したという。同報道の中で同社営業担当者は「大使館からの問い合わせがなかったとしても(ブラジル人の登録を)やめるつもりだった」と説明し、東京電力広報部は「(東電が)直接雇用している外国人労働者はいない。下請け企業が雇用している従業員に対しては把握、説明する立場にない」とコメントしたという。
 この一件については両国で話題となり、インターネット上でもあちこちで書き込みがみられるなど物議を醸した。
 日本人のものとみられるブログ(インターネット上の日記)には「いよいよ原発作業員の不足が表面化してきた」という一般論もあれば「恥知らず。まずは東電が行くべき」と批判する書き込みがあった。
 一方ブラジル人が運営しているとみられるポ語のサイトには、大使館が取った対処に関するコメントが複数書き込まれており、そこには「適切だったと思う」「いくら給料がよくても、病気になれば死ぬまで苦しまなければならない。大使は正しかった」という肯定的な意見が目立った。
 その一方、「個人個人がやりたいことをやるもので、それを奪う権利は誰にもない」「不況の日本で定住を決めた人々の雇用状況が悪い中、彼らを支援しようとしないのなら政府は禁止すべきではない」という否定的な意見もみられた。