第4回=外食増えた? ブラジル人の食生活=米国で知る日本食ブーム

ニッケイ新聞 2012年6月19日付け

 【久慈】売り上げを見ても絶対にそれはいえる。高い商品を置くレストランが増えた。04年、リベルダージで「南部美人」を置いてくれる店はないと思った。でもその店ではなく客層が変わって、酒を選ぶ人が増えたのではないかと。
 —つまり色んな日本酒を飲んでみたいという人が増えてきたと。
 【久慈】
我々はどこまで行っても醤油と違って、選んでもらわなきゃいけない。醤油だったら店に選んでもらえれば、ずっと使ってもらえるけど、我々は店に選んでもらっても、その中から選んでもらわなきゃいけない。
 —醤油の扱われ方も変わった?
 【森】
醤油に興味をもってくれる人が増えた。最近ブラジル人はマイアミとかに旅行して日本食を食べている。「寿司に使ってる醤油の味がブラジルと何か違う」という話が勝手に出てきた。
 あるいは若者のネット上で、「この醤油知ってる?」ってうちの名前が出たり。今まで頑張っても認識されなかったものが、自然とブラジル人側から出てきた。明らかに地殻変動が起きてるなという気がする。
 —でも日本酒と違って客は醤油の銘柄を選べない。
 もちろんシェフに使ってもらわないといけない。やはり知り合いのシェフにお墨付きを頂ければ簡単。でもその次の世代をどうするか。
 だから今までやって来たことは、レストランで修行している若い人達に教える。あるいはSENAC(国立商業実習サービス)が主宰する料理学校に協賛して学校の授業の中で使ってもらう。
 そういう投資をやるうちに、卒業生が店開ける時にリクエストをくれるようになった。それがここ2年で多くなった。
 【久慈】2、3年前にサンパウロで大きな試飲会をやったら、「アメリカで南部美人を飲んだ」「NYでジョン・ゴントナー(アメリカ人日本酒ジャーナリスト)の酒セミナーで知った」という人がいた。アメリカの日本食で盛り上がる人達。森さんが言われた通り、他の国で日本食を知るブラジル人が増えたっていうのは、僕は住んでないから分からなかったけど、今の話を聞いて納得しました。
 【森】80年代と違って、今は外来文化にすごく興味を持って、輸入物とか舶来物を抵抗なく受け入れる若者が増えたと聞く。軍政だった84年までは、割と保守的でナショナリスタな人が多かったけど世代が変わって、輸入を好む人達が増えたのが背景にあるのかな、と。
 —興味深い分析ですね。
 【高山】
私たちも最初は深い平皿だったけど、完全に丼にした。『丼文化』を伝えたいという気持ちもある。ナイフ・フォークで食べる人もいますけど、お箸がかなりいる。それも一種のブームだと思う。
 —地域によって違うと思うんですけど、割合で言うとどのくらいの人が箸を使いますか。
 【高山】
いわゆる非日系人の6割くらい。日系人はほぼ全員。
 —しかし「丼は難しい。皿に出してくれ」とか言われないですか?
 【高山】
食べにくくても日本式に本当はお箸で食べたい。食べられないからナイフ・フォークで食べるけど、やっぱりお箸っていう感じはある。だから習ってる人もいる。意外と「すき家」を知って来る人も多い。ただ、寿司、天ぷらを期待して来たけどメニュー見て、ちょっと違ったなという感じで帰られるブラジル人のお客さんもたまにいる(笑)。(つづく)

写真=「キッコーマン」を使ったSENACでの講習風景