日系社会は貴重な外交資産=駐ブラジル日本国大使 三輪昭


ブラジル日本移民104周年

ニッケイ新聞 2012年6月23日付け

 6月18日に第104回目の「日本移民の日」を迎えるにあたり、ご挨拶申し上げます。
 ブラジルは日本から見ると地球の反対側に位置し、距離的には非常に遠い国です。その遠い日本から最初の日本人移住者が笠戸丸に乗り、海を渡ってブラジルに到着した日からはじまる長い移住の歴史の中で、6月18日は、移住者の方々が築き上げた大きな足跡を振り返るまたとない機会であり、記念すべき大切な日でもあります。
 在ブラジル大使としてブラジルに着任して以来約1年8カ月がたちますが、その間、広大なブラジルの北から南の各地を訪問し、ブラジル政府の要人等と会談するさいに実感するのは、農業開発の分野での功績をはじめ、移住者の方々がブラジル社会から高く評価され、また、多くの日系人の方々が重要な役職に就いて活躍されていることです。
 このような信頼関係は、一世紀以上にわたって移住者の方々が筆舌に尽くせぬ御苦労や御努力を重ねながらも、真面目で誠実な生活態度がブラジル社会に高く評価され、さらにはアマゾンの奥地にまで入ってブラジルの経済・社会発展に貢献されたことが、ブラジル社会において日本や日本人が信頼される基盤となったものと確信しております。そのため、日本人にとってブラジルほど親しみやすく、親日的な国はないと思っております。
 ブラジルにおける日系社会の存在は、日本における日系ブラジル人社会も含めて、日本とブラジル両国にとって貴重な資産です。
 そのため日本政府としても、日本で働く日系人及びブラジルで働く日系企業駐在員等の皆様のご負担軽減等になることを目的とし、「社会保障に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の協定」を締結し、本年3月1日に発効にいたっています。
 また、「商用目的の数次入国査証の円滑化に関する日本国政府とブラジル連邦共和国政府との間の覚書」を締結し、最長3年間有効な数次入国査証の発給の円滑化を図っています。これらにより、さらなる両国の人的交流及び経済交流が促進されることが期待されます。
 今後益々、政治的にも経済的にも存在感を増すブラジルとのさらなる関係強化を図ることは日本政府の方針でもあり、日系社会の厚い絆によって結ばれた両国の関係が更なる発展に向けて着実に前進するように、微力ではありますが、全力をあげて取り組む所存ですので、日系社会の皆様からも御協力・御支援を賜れれば幸いです。
 日系社会の皆様のご活躍とご健勝、日系社会の一層のご繁栄をお祈り申し上げます。