コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年7月7日付け

 サンパウロは四季がはっきりとしない—そうだが、やはり夏は暑く冬は寒い。俳句をたしなむ人たちは、先月の22日辺りがサンパウロの「冬至」であり、1年で最も昼の時間が短いとする。日本では、この日から日が長くなり春が近づくので一陽来復とも云う。この冬至の日には、南瓜やお粥を食べるけれども、移民たちにも、こんな昔からの習慣が守られていたかは疑わしい▼まあ、冬将軍とは云っても、ここでは寒暖計が10度を切るのは珍しく、ちょっと厚い上着を着れば寒さは防げる。退社し帰宅を急ぐサラリーマンも、馴染みの赤提灯で「おでん」を楽しみ、熱燗でご機嫌なのだが、近頃はそんなお袋の味を自慢する店が少なくなり、昔に比べると寂しく、呑兵衛も中々に辛い▼それに—日本の極寒の地・北海道の陸別町に比べれば、サンパウロは真夏のようなものだ。この町は1978年に零下38度の記録があり、2000年には零下40度以下になったらしいが、こんな厳寒に驚いてはいけない。露のシベリアにあるサハ共和国の村は、なんとマイナス71・2度にもなり、これが世界一寒い村なのである▼オイミャコンという村で村人は900人。家には薪ストーブが燃えているが、それでも家屋内は零下20度ほどと寒い。それでも、村人らは「暖かい」とにこやかなのだ。何しろ,戸外で鼻水でも垂らせば、たちまち氷柱となり、夏には30度を超すから冬との温度差は100度を突破の凄さだし、サンパウロの厳冬?は真に「暖かい」のである。(遯)