YOSAKOIソーラン10周年=第11回=次世代担う高橋ジョー氏=「飯島氏の情熱残したい」

ニッケイ新聞 2012年7月24日付け

 「時間を守る」「整理整頓」「挨拶をする」—YOSAOI3原則は徐々に浸透しているようだ。飯島氏は「初めは『どうせ遅れる』と思って遅れてきていた観客も、時間通りに来るようになった」と喜ぶ。演技が終った後の会場やバックステージもきれいに保たれている。
 一昨年頃からレベルが上がってきたことを実感しており、「気持ち的には日本に劣らないくらい」と言葉に熱がこもる。しかしながら、「俺がいつまでもやってちゃ周りが成長しない」と、今年から徐々に手を引くつもりだ。そのためには、大会開催費用や関わる役員らの報酬を調達するだけでなく、いずれは参加チームにも資金援助が出来るような体制作りが必要と、ルアネー法の利用を開始した。
 同法は、企業が文化事業に所得税の一部を当てることができる免税制度で、NPO法人認可を受けたブラジルYOSAKOIソーラン協会も適用対象となる。数年前から利用を始めたが、認可が下りるのが大会直前だったり出資企業を集められなかったりと、まだ十分な資金源とはなっていない。
 資金面をはじめ組織全体の〃体質改善〃を図るため、飯島氏は近年、道クルツラルの高橋ジョー代表を運営の舵取りに呼んでいる。
 高橋代表は6回目大会から審査員を務めており、ダンスや舞台関係の専門家を審査員として紹介するなどしていた。昨年は広報も行い、今年から徐々にスポンサー集めを担っている。「大会も10回目とあってかなり評価されている。徐々にイベントを独立できるよう、側面的なサポートをしていきたい」と話す。
 資金集めについては、「開催費用20万レアルという額は、イベントとしてそれほど高くないし、1口5万レとしても企業にとってはたいしたことはない。それを上手く利用しないと」と頼もしい一言。あくまで補助的な立場として、来年から本格的に参入する姿勢を見せている。
 「これからのブラジル社会にも団体精神が必要。それでなければ世界に通用しないと思う」。YOSAKOIの教育的効果は、企業へのアピールポイントになるという。更に「私の印象では、今は出場者の家族や友人が中心に見に来ている傾向にある」と話し、今後は非日系人への広報に力を入れていく考えを示した。
 「飯島さんのパッション(情熱)を壊さず保存していくのは、大きな責任」と表情を引き締める高橋代表、「YOSAKOIには日本の〃粋〃がある。それをもっと追求し、普及していきたい」と締め括った。
 ●日後に控えた10周年記念大会は、当地YOSAKOIの歴史にとって一つの大きな節目となるだろう。日伯両国の文化が出会い、変化し、融合し合う場となったYOSAKOIは、これから日系社会そして若者達をどう変えていくのだろうか。今後の発展に注目していきたい。(おわり、児島阿佐美記者)

写真=大会の開会式で、高橋ジョー氏(左から2番目)