東京・不二出版=『輝号』の編集復刻版=勝ち組を代表する雑誌

ニッケイ新聞 2012年7月24日付け

 終戦後の勝ち組勢力を代表する雑誌の一つ『輝号』の編集復刻版が日本の不二出版(東京都)からこの18日に出版されたことを伝えに、解説執筆者の岸和田仁(ひとし)さん(60、東京都)が来社した。
 ブラジル主体のラ米研究家として知られ、『熱帯の多人種主義社会』(つげ書房新社、05年)などの著書もある岸和田さんは、次のような解説を書く。《「カチ組」運動をごく表層的にみれば、無知な時代錯誤者たちによる狂信的な運動であった、という〃常識的な〃解釈になってしまう(当時、過激な「マケ組」からは「狂信の徒」「愚民衆団」と愚弄された)が、実態はそのように単純なものではなかった》ととらえている。
 さらに《だからこそ、後年の多くの歴史学者や人類学者を悩ませることになるのだが、社会的なマイナス諸条件下におかれた〃民族集団〃による、メシア主義的要素も含む「回生運動」とみなすのが妥当と思われている》と説明している。
 『輝号』の創刊号(1949年3月)は全頁、それ以降の全47号各号は目次と編集後記のみを収録。紹介パンフレトには「『勝ち組』思想を読み解くための貴重資料」との見出しが躍る。これは同出版社が刊行する「十五年戦争重要文献シリーズ」の補集3としてB5版、180頁、定価1万9千円で出された。
 21日から日本では勝ち負け抗争を描いたブラジル映画『汚れた心』(ヴィセンチ・アモリン監督)が公開されていることから、岸和田さんは「期せずして映画とほぼ同じ時期に出版となった」と語り、日本でブラジル日系社会への感心が高まることを喜んだ。岸和田さんは19日に再びブラジル駐在員としてレシフェに赴任した。