コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2012年7月24日付け

 両足に虫に噛まれたような跡が無数にでき、猛烈に痒い上に出血するという異変が現れてからかれこれ2週間。医者に行き抗生物質を服用しても一向に治る気配がない。
 アマゾン開拓の夢を抱き戦前に渡伯した高拓生200人以上が入植した、アマゾナス州パリンチンスのヴィラ・アマゾニア区。先月末に訪れ、その山奥にある共同墓地に眠る先人の墓を前にしたときは言葉を失った。
 「高拓生先没者慰霊之碑」と書かれた青い壁に、14人の〃兵〃の名前が書かれたプレートがある。同区に一世はおらず、日本人の影も形もない。慎ましい暮らしをしていると思しき民家が立ち並んでいるだけだ。
 こんなにも遠い場所に日本人が80年前にたどり着き、この世を去り、今も眠っている—。不思議な感覚にとらわれている間、同時に虫に喰われていたと知るのはその一週間後のことだ。(詩)