コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年8月2日付け

 日本にいないので〃体感〃としては分からないが「韓流」はすでにブームではなく定着しているのだろう。普通にドラマや歌がテレビで流れることもあり、遠くて近かった隣国が本当に身近な感覚になっているに違いない。若い世代の偏見は薄いだろうから、近い将来、差別意識もなくなるかも知れない。三世で日本一の金持ちとなったソフトバンクの孫正義に憧れる若者も多いだろう▼沖縄に対する差別もかつては強いものだった。大阪に大きなコミュニティーがあるのもその証左だし、当地コロニアでもそれはよく見て取れる。本土復帰後に生まれたコラム子の世代からすれば、差別どころか、憧れの地であり、本土からの移住者も多い。沖縄に対する感覚の世代交代は朝の連ドラ「ちゅらさん」にトドメを刺す▼先日、NHKドラマ「刑事の現場」を見た。日系ブラジル人が引き起こした事件に憤る若手刑事に、寺尾聰扮するベテラン刑事が「事件の表だけ見るな」と釘を刺す。ブラジル人が多く住む団地が舞台。日本人住民との軋轢、子弟の教育問題、就労環境を絡め、なかなかの出来だった。免許を剥奪されたものの、団地内で赤ひげ先生と慕われる医師を脅迫から守ろうとするアイデンティティに悩む青年の犯行だった▼こういうテーマをドラマで扱うようになったのか—。それも第1回目である。在日ブラジル人問題が一般に知られていないだけに感慨深く思ったのだが、調べてみると、奇しくも移民100周年があった2008年制作のドラマの再放送だった。あれから4年、状況は大きく変わったが日本人の意識はどうだろうか。(剛)