コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2012年8月4日付け

 フジモト・パトリシア被告の裁判取材は、完全に肩透かしに終わった。
 事前に裁判所に出向いて職員に尋ね、「判決まで出る」と聞いたので、気合いを入れて行ったのだが—。「結膜炎で来なかった」と検察官から聞いたときは、ため息が出た。結局、判決を先延ばしにしたいのだろうか。
 法廷に現れた父親は、日本の特派員がほぼ勢ぞろいしていたからかもしれないが、取材を頑なに拒否した。裁判後に記者数人で追いかけたが、結局巻かれてしまった。
 謝罪の言葉もなければ、被告も出廷しない。父親があくまで「こちらが被害者」という姿勢を崩さないのは、デカセギ生活で嫌な思いをしていたからだろうか—。そんな想像が頭をもたげる。
 「両側の話を聞かないといけない。警察は事実を粉飾するから」。ともに取材した同僚のブラジル人記者は、この件に関してはあくまで冷淡だ。(詩)