コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2012年8月9日付け

 先日、ポ語の家庭教師が9キロ離れた別の生徒宅から歩いてやって来た。はじめはビレッチ・ウニコの残高がなかったなどと説明していたが、実は生活が苦しいのだと泣き出した。いつもは気丈な先生の涙に面食らった。
 雇い主の語学学校の給与は時間制で、生徒が出張や旅行で度々欠席する月は生活が困窮する。更に税金納入を避けるため正社員登録もなく、教材準備費や交通費も支給されない。「それでも今までで一番ましな学校。訴えれば次はどこも雇ってくれなくなる」と嘆く。
 顧客は大企業が多く、月謝も安くはない。学校が潤っている可能性は高いが、利益は教師に還元されない。教育の重要性が叫ばれて数十年経った今なお、学歴・能力を備えた教師すら不当な立場に置かれているのが、この国の教育事情なのだと痛感した。いつか先生の涙が報われるよう願わずにいられなかった。(阿)