ピニャール移住地50周年=入植半世紀の節目迎え=福井県知事「関係強化を」=コロニア内外4百人出席

ニッケイ新聞 2012年8月11日付け

 ピニャール移住地入植50周年式典が5日、コロニア・ピニャール文化センター(サンミゲル・アルカンジョ市)で開かれた。西川一誠・福井県知事ら慶祝団21人のほか、同市のアントニオ・セウソ・モシン市長、安部順二連邦下院議員ら来賓を含む約400人が出席、共に喜びの日を祝った。

 先亡者慰霊法要後、午前10時から式典が始まった。コロニア・ピニャール文化体育協会の西川修治会長による開会宣言、日伯両国国歌が斉唱された。
 50周年記念事業委員会の山下治委員長は、移住地発足の経緯とともに創設・発展に携わった関係者への感謝の言葉を述べた。
 西川知事は開拓先駆者に敬意を表したうえで「今後も県とピニャールとの関係を発展させ、日本とブラジルとの友好交流に寄与していきたい」とあいさつした。
 来賓祝辞の後、日本側の慶祝団とブラジル側双方から感謝状の授与と、慶祝団への記念品の贈呈もあった。
 当日、落成式があった体育館で開かれた祝賀会では、移住地日本語学校の和太鼓グループによる演奏や、同校生徒らによる合唱曲などが披露され、賑やかに会食が行われた。
 村に残る唯一の第一期移民(1962年12月入植)である織田真由美さん(76、福井)は「50年を迎えて改めて思うのは、人の和や絆の大切さ。人と人との関係性を大事にして、これからも頑張っていきたい」と感慨深げに話した。

コロニア・ピニャール(福井村)50年の歩み

 1962年12月 福井県より大川茂、織田幸夫、出口清市の3家族14名が第1陣として入植。
 1963年5月 自治会発足。会長に大川茂氏就任。
 1964年10月 コロニア・ピニャール日本人学校開校。
 1971年7月 JICAより50%の助成で村内の電化工事完了。
 1972年7月 入植10周年記念式典開催。
 1976年6月 自治会解散、文化協会として発足。
 1979年3月 公立ブラジル小学校(JICA100%助成)の落成式が行われる。
 1982年6月 文化センター落成式並びに入植20周年式典開催。
 1983年4月 JICAより移住地独立の許可と公共用地並びに建設物譲渡がなされる。
 1992年4月 大川茂文協初代会長が日本政府より勲六等瑞宝賞を受ける。同年6月には30周年式典開催。
 1997年2月 前年6月にJICAからの助成で建設が決まっていたコロニア・ピニャール日本語モデル校落成式並びに開校式を開催。
 2002年7月 入植40周年式典を開催。福井県より栗田幸雄知事らが来伯。
 2008年6月 日本移民100周年鳥居落成式並びに舗装工事完成式典を開催。
 2012年8月5日 西川一誠福井県知事ら慶祝団21人を招き、50周年式典を開催。記念の落成式典も行われる。

ごあいさつ=福井県知事 西川一誠

 コロニア・ピニャールでは、1962年12月に3つの家族、14人の方々が入植されて以来、南米の気候、風土、文化、習慣の中で、村づくりの理想と理念の下、入植者の皆さんが一丸となって安住の道を切り開いてこられました。
 ここに改めて、福井県民を代表し、幾多の試練を乗り越えて今日の発展の礎を築いてこられた先駆者のご労苦に心から敬意と感謝を表します。 
 福井県は今、日本一幸せな県であるとの調査の結果が出ています。子どもたちの学力・体力ともに日本一の県でもあります。今後も福井県とコロニア・ピニャールとの交流を着実に発展させ、地域レベルでの交流を通して、日本とブラジルとの友好関係の発展に寄与していきたいと考えております。
 終わりに今回の式典の開催にご尽力をいただいた皆様に改めて御礼申し上げると共に、皆様のますますのご健勝とご発展を祈念して挨拶とさせていただきます。

〝村の悲願〟記念体育館=県の助成受け、堂々完成

 50周年記念事業の目玉である記念体育館の建設は、福井県からの助成と同移住地に住む天野鉄人氏の援助を受け、昨年6月から建設が進められてきた。1040平米の大きさで総工費は約65万レアル(約2500万円)。
 式典後にあった落成式では、7本の杉とコッケイロが記念植樹された。真っ青に塗られた体育館の戸が開けられ、西川知事らによってテープカットが行なわれた。
 西川会長は「(体育館建設は)村にとって長年の悲願だった。運動の場としてはもちろん、様々なイベントの会場としても活用していきたい」と満面の笑顔で話した。

リーダー役として活躍=現地移民第一期 山下治さん

 1959年にコチア移民として来伯していた山下治さん(76、福井)は、63年3月にサンパウロ州ロウヴェイラ市から第一期の現地移住者としてコロニア・ピニャールに現地入植した。
 母県が入植者を募集しているという知らせを日本の両親から伝え聞き、すぐさま転住を決意。「一から村づくりを」との思いだったが「電気もガスも通っていない。木を切り土を練って自ら家を建てた。一すらない、本当に0からのスタート」だったという。
 27歳という働き盛りの年齢で入植したこともあり、生まれたばかりの移住地を〃理想郷〃とするため、身を粉にして奮闘した。
 サンミゲル・アルカンジョ南伯農業協同組合組合長を始め、各種記念式典の委員長、文協会長などの役職でリーダーシップを発揮。村の電化工事や文化センターの建設にも尽力した。
 50年の節目を迎えた今年、改めて「福井県、JICA、南伯農協中央協会の方々の応援があったから今がある」と振り返る。
 今の心境を尋ねると「理想の村を作りたいという村民の願いが叶いつつあると思う。すでに上手く下の世代にバトンタッチが出来ているから、あとは彼らに期待するだけ」と笑った。

2012年度 コロニア・ピニャール文化体育協会役員

 会長=西川修治、副会長=徳久俊行、越智勝治、第一会計=北原まき・レイナ、第二会計=大橋勇・アミルトン、第三会計=本間進・アントニオ、学務=広瀬義夫、農事=市瀬成生、厚生=田中得朗、土木=広瀬昭雄、体育=大河原邦弘、文化=福田憲太郎、監事=川上忠義、貴田孝平、小林大作
◆入植50周年記念事業実行委員
 委員長=山下治、副委員長=西川修治、古屋ロベルト義則、会計=北原まき・レイナ、小林大作、財務=広瀬義夫、金兼文好、大橋勇・アミルトン、書記・編集=川上忠義、徳久俊行、事業=越智勝治、貴田孝平、本間進・アントニオ