在日外国人=65%が〝実質的な移民〟=池上教授が近況を講演=静岡「日本に永住」倍増

ニッケイ新聞 2012年8月16日付け

 現在各地で公演をしている俳優集団「まりまり」訪伯の企画監修をする池上重弘・静岡文化芸術大学教授(49、北海道)が、11日午後2時からサンパウロ市のブラジル日本語センターで行われた同公演にさきだって、ここ4年ほどで特に顕著になった在日ブラジル人の定住化傾向の高まりについて講演した。

 外国人登録者数はこの20年間で100万人から200万人と倍増した。ただし08年末の世界金融危機以来、14万人の外国人が減少し、うち大半を占める10万人がブラジル人だった。その結果、最盛期に31万人を数えたブラジル人は現在20万人ていどとなった。
 静岡県内で在日ブラジル人に意識調査したところ、危機前の07年には「日本に永住」と答えた人が12・9%だったが、危機後の09年には23・5%と倍増していることが分かった。同様に「3年以内に帰国」が20・1%から13・0%に、「10年以内に帰国」が9・1%から5・4%に減少しており、短中期的な滞日希望者が激減し、その分「永住」希望の長期的展望を持つ者の比率が高まっている。
 と同時に、「県内の公立高校でも外国人の進学が増えている」と発表した。06年から07年の外国人進学者はほぼ横ばいの300人(うち半分が夜間の定時制)だったが、11年には640人と2倍以上に増え、うち350人程度がブラジル人だった。全日制への進学者の比率も増えている。
 3・11大震災の前後を比較するために、10年末と11年末の外国人登録者数をみると、総数自体は5・5万人も減っているのに、永住資格を取得した外国人は3・3万人(56万5089人から59万8436人へ)も増えており、池上教授は「今後も永住ビザを取るひとは増えていくだろう」と見ている。
 このような変化の結果、永住者、日本人の配偶者、定住者の資格を持つ外国人が増えており、「65%が実質的な移民」と定住化傾向を総括した。
 最後に、そのような時代ゆえに交流の必要性を感じ、日本最大の在日ブラジル人集住地の一つである浜松市の公立大学が、地域に貢献するために「まりまり」公演の企画に関わったと説明した。
 来場者約50人の一人、日本語教師の中田みちよさん(70代、青森)は「日本移民にとっては大戦が永住を決意させたが、在日ブラジル人にとっては金融危機、大震災がそのきっかけとなっている様子が良くわかって興味深い講演だった。日本移民の裏返しの現象が今日本で起きている」としみじみ頷いていた。