1千人超える留学生が日本へ=伯政府「国境なき科学」=協力文書に両国が署名=来年4月に派遣開始予定

ニッケイ新聞 2012年8月31日付け

 目標人数は年間1300人、これまでにない大規模な留学計画が来年にもスタートする。受け入れ可能な機関約80のうち、今回は東京、筑波、東北、横浜国立など国立8、早稲田、芝浦工業の私立2大学の関係者が来伯した。
 約80人が参加した夕食会で挨拶した文部科学省の山野智寛・大臣官房審議官(高等教育局担当)は、日本には年間14万人の留学生が来ているがブラジル人は300人に過ぎないとし、「ブラジルはポテンシャルが高い。今後は日本からの留学生も増やし、特に若い世代を育てたい」と話した。
 受け入れ側大学の一つ北海道大学では、2017年末までに全学生数の1割にあたる1800人を留学生にするという計画があるという。現在1350人いる留学生の出身国は中国が6割で、ブラジル人はわずか4人に過ぎない。
 同大国際本部国際連携課長の五味田將さん(47、茨城)は、「ぜひ多くのブラジル人学生を受け入れたい。姉妹校もどんどん増やしていければ」と、ブラジルとの学術交流の発展に期待した。
 一方、送り出し側のUSP理工学部の西本和生教授(57、三重県出身)は「日本には世界に誇れる技術があり、ブラジルは資源を開発するための技術が必要。日本の人にブラジルに来てもらい、ともに研究するのも一手」、航空技術センター(CTA)の今村オズワルド教授(57、二世)は「両国では研究方法が違うはず。新しい考え方を取り入れ、色々な価値観をもった人間が同じ研究をすることは意義あること。そういうことができる人材を育てる時代にある」と、それぞれ考えをのべた。
 今回のプロジェクトでブラジル政府は、学生が留学先で企業でのインターンシップ(実務研修)を行うことを希望している。ヒュンダイ、ジェネラル・エレトリック、ボーイング社などは受け入れを表明しており、日本への留学生が帰伯後、日本進出企業にインターンとして受け入れられることが期待されている。
 夕食会に出席した当地進出企業の関係者は「忙しい中でも自社の人材育成は必須。将来の社員や顧客になりうる人材を受け入れることが重要では」と前向きに話した。
 同夕食会を主催した三輪昭日本国大使は「日伯は人的関係が最も深い。5年後、10年後に両国の経済関係の基盤を作る人材が育てば」と期待した。
 なお協力文書の署名は先月末、文部科学省で行われ、そのさい既に当地の主要大学関係者含む30人が訪日し、日本の大学を訪問、政府主催のレセプションに出席している。