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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月1日付け

 ブラジルにも来たことがある評論家・大宅壮一さんは、戦後の学制改革の直後に「駅弁大学」と喝破し評判になった。戦前は、旧1高や3高から旧帝大へと大学は少なく、学生は「末は博士か大臣か」とされ教授ともなれば、将に神様のような存在である。ところが、マッカアサー元帥の指令によってかアメリカの学制を採用し各地に大学が乱立したのを揶揄した大宅語録だが、この弊害は今に続く▼大学生らの勉強不足は、教授などがよく指摘するところだし、実際に学力は低い。これは国立もながら多くの私立では目を覆いたくなるような成績ばかりが目立つ。そんな大学の現状を嘘偽りなく示しているのが、「私大の定員割れ急増」の調査結果であろう。日本には、私立大学が577校あり、これの47%が定員割れになっているのだから驚く▼これは東日本大震災の影響も大きいとかの説明もあるようだが、そんなことではなく、大学としての魅力と学生の実力や教授陣らの学識不足が原因と見るのが正しいのではないか。尤も、これらは伝統もなく教育ブームとかの風潮に乗って創立された急造組に違いなく、ある意味での「カネ儲け主義」だったのだろうが、こんな目論見は見事に外れ経営不振に陥って「参りました」と降参の声もあるそうだ▼まあ、天下の東大にしても、世界のランキングでは第8位、京都大が20位とまあまあの順位ながら1位のハーバードやケンブリッジにはほど遠い。どうやら日本人の頭は余り良くないな—とも思うが、私立大の課題は難しく、抜本的な学制改革が必要だし、これがないと日本の将来は真に暗い。(遯)

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