第3回全伯俳句大会=優秀作を一挙掲載

ニッケイ新聞 2012年9月13日付け

 ブラジル日本文化福祉協会が主催した第3回全伯俳句大会(後援 ニッケイ新聞)が8月19日、同ビル内で行われた。兼題部門は「冬季一切」で5句投句、投句総数は883句(投句者数177人)、特選(◎)は12句、他は秀作120句、選者は12人(アイウエオ順)となっている。

池田童夢選 ◎ 山眠る大きな夢をふところに ボニート 佐藤けい子 移民祭同化の顔をたたえ合ふ パラー州ベレン 渡辺 悦子 マリア月花嫁移民も皆老ひし ブラジリア 山根 敦枝 気がつけばもうこの時間日短 ポンペイア 岩本 洋子 座右とすブラジル歳時記移民の日 サンパウロ 清本 美恵 寒雷や侮りがたき暴れ様 ソロカバ 住谷  久 思い切り日本語使い日向ぼこ サンミゲール・アルカンジョ 広瀬美知子 梵鐘や後は静かな冬の町 サンパウロ 玉井 邦子 リオ五輪地搗の音や春近し サンパウロ 西谷  晃 句碑の町囲みて四方の山眠る リベイロン・ピーレス 山城みどり 暖冬はエルニーニョからの贈り物 ボニート 佐藤けい子
伊津野朝民選 ◎ 元気でと届く地鶏の寒卵子 サンパウロ 小西 成子 バイア路に真の乾季を見て来たり ドイス・イルモンス 笹谷 蘭峯 ユーカリの山合いの村冬火濃し カンピーナス 大橋 昭子 冬耕や醸す堆肥もゆげたてて  サンミゲール・アルカンジョ 大橋 松代 冬草に埋もれ朽ちたる大鶏舎 サルト・デ・ピラポーラ 長田美奈子 帰化せづも故郷は二つ冬銀河 南麻州カンポ・グランデ 城田みよし 麻州より逃げ水追うてミナス旅  南麻州カンポ・グランデ 渡部 チエ 冬の虹華やぎまたぐ大河かな ピエダーデ 小村 広江 ひろがりの水輪に消えしカイツブリ サンパウロ 平間 浩二 廃駅を幾つも過ぎて冬の町  サンパウロ 高橋 節子 二世兵語る体験終戦日  リベイロン・ピーレス 西川あけみ
伊那 宏選 ◎ ブラジルに父母の青春移民の日 リベイロン・ピーレス 西川あけみ 移民祭同化の顔をたたえ合ふ パラー州ベレン 渡辺 悦子 冬耕の広く果てなきブラジル領 バウルー 佐々木古雪 卆寿超す舞の稽古や寒の入り サンパウロ 椿  栄子 マリア月花嫁移民も皆老ひし ブラジリア 山根 敦枝 心あるごとくほころび帰り花 グァルーリョス 二見智佐子 柚子風呂にひと日の煩悩溶かしけり 栃木県 半澤 典子 歳ふと忘れ華やぐ菊日和  サンパウロ 小西 成子 鴇色の冬霧深し大河消す  パラー州ベレン 渡辺 悦子 寒雀お前も一羽淋しいか  南麻州 那須 千草 句碑の町囲みて四方の山眠る  リベイロン・ピーレス 山城みどり   浦畑艶子選 ◎ 壁白き部屋に妻亡き寒さかな   スザノ 藤田朝日子 ブラジルに昇れば冬の月となる  パラナ州クリチーバ 秋村蒼一郎 寒暖計一桁下る寒さかな   サントス 下田  学 マフラーを派手に結びて始発バス  サンカルロス 富岡 絹子 移民てふ言葉に偲ぶ瓢骨忌   ブラジリア 富樫 羽州 寒夕焼なんで気になる死後のこと  サンパウロ 山本英峯子 思い切り日本語使い日向ぼこ サンミゲール・アルカンジョ 広瀬美知子 隙間風故国の政治揺れやまず パラナ州クリチーバ 西  朋子 毛糸編む生活(くらし)の足しにと子等知らず サンパウロ 佐藤 孝子 寄鍋や遅れ来し子に火を強め サンパウロ 和田貴美子 舞う鷹の突如弾丸に変わりけり ブラジリア 井上富美子
小斎棹子選 ◎ 思い切り日本語使い日向ぼこ サンミゲール・アルカンジョ 広瀬美知子 我が町は肥沃の土地よ大冬木 サンパウロ 伊津野 静 仏前も供えくれあり秋に臥す パラナ州マリンガ 中村としゑ バイア路に真の乾季を見て来たり ドイス・イルモンス 笹谷 蘭峯 大榾を起す男衆声揃へ アチバイア 宮原 育子 寒灯下夫亡き後は辞書を引き サンパウロ 佐藤 孝子 握手して言葉要らざり移民祭 アチバイア 宮原 育子 待合室寒き鏡の中にいる スザノ 柿島 貞子 晩年の父の遺影や冬木立 ボニート 佐藤けい子 寄鍋や遅れ来し子に火を強め ブラジリア 名和貴美子 母を看る我が寝ている冬日和 リベイロン・ピーレス 山城みどり
杉本絃一選 ◎ 人生の余白に挑む懐手 パラナ州ロンドリーナ 栄森さか恵 移民等の歴史を抱いて山眠る サンパウロ 脇山千寿子 見直さる世界の田舎春を待つ サンパウロ 馬場 照子 大枯野移民の夢の跡偲ぶ サンパウロ 菊池 信子 祖の土台継ぎて絆の移住祭 サンミゲール・アルカンジョ 織田真由美 百年余水流清し移民の日 モジ 村上 士郎 枯木立老いて遠くが見えて来し ポンペイア 須賀吐句志 握手して言葉要らざり移民祭 アチバイア 宮原 育子 日伯の神の加護受け八十路生く ゴイアス州クリスタリーナ 大久保嘉庫 来し方の友誼偲ばる冬の葬 サンパウロ 松崎きそ子 句碑の町囲みて四方の山眠る リベイロン・ピーレス 山城みどり
富重久子選 ◎ わが祖父は広島なまり移民の日 ブラジリア 日高パウロ 寒灯下夫亡き後は辞書を引き サンパウロ 佐藤 孝子 終点の駅はこのつぎ冬の月 南麻州カンポ・グランデ 里  晋平 冬の虹華やぎまたぐ大河かな ピエダーデ 小村 広江 まだ数多花を咲かせて梅古木 セザリオ・ランジェ 井上 人栄 地に凍てる蝶を危ふく踏む所 サンパウロ 高橋 節子 畳みたる大きな眼こいのぼり サンパウロ 串間いつえ 友人の訃報さざんか散る夕べ パラー州トメアスー 三宅 昭子 土地柄が良くて住み着き日向ぼこ ピラポジーニョ 樋川 勝重 仲良しにお多福風邪をもらひけり サンパウロ 猪野ミツエ 人中にギョウザつまみて小春市 ソロカバ 住谷  久
新津稚鴎選 ◎ ブラジルに感謝をこめて移住祭 サンパウロ 立石 松男 野鳩びな巣立ち待ちて枝手入れ アチバイア 吉田  繁 落葉踏むこの感触と音がすき ブラジリア 井上富美子 いい朝にいい顔をしてシクラメン サンパウロ 近藤玖仁子 壁白き部屋に妻亡き寒さかな スザノ 藤田朝日子 おどけては笑はせて医師冬ぬくし サンパウロ 伊津野 静 何時聞くも聖歌は清し冬かすみ サンパウロ 玉井 邦子 虎落笛身をけずるごと吹き荒らし サンパウロ 秋末 麗子 冬こもる世に出そびれし思いかな サンパウロ 水野 昌之 揺り椅子に余生をあづけ冬日向 ポンペイア 須賀あつ子 生涯をポ語になじめずちゃんちゃんこ ポンペイア 須賀吐句志
西谷南風選 ◎ 句碑の町囲みて四方の山眠る リベイロン・ピーレス 山城みどり 農一途励みし吾子に春の風 サンパウロ 中村たつみ 耳遠く友の親切冬ぬくく ポンペイア 袴田みつ子 生も死も歓喜の道と冬を逝く 南麻州カンポ・グランデ 城田みよし 冬の虹鏡の奥にある山河 サンパウロ 畔柳 道子 移民祭織り成す歴史貴かり サンパウロ 伊藤 智恵 マリア月花嫁移民も皆老ひし ブラジリア 山根 敦枝 万物に生きる力や冬木の芽 ポンペイア 須賀吐句志 ほゝ笑みに目礼返す冬ぬくし サンパウロ 猪野ミツエ 枯木立老いて遠くが見えて来し ポンペイア 須賀吐句志 幾別春の句碑に冬日のあたたかく スザノ 藤田朝日子
広田ユキ選 ◎ 老いの風呂またのぞかるる冬の夜 スザノ 寺尾 芳子 牛にやる乾燥サボテン大乾季 サンパウロ 佐藤 孝子 着膨れて老醜隠すべくもなし サンパウロ 湯田南山子 寒灯下夫亡き後は辞書を引き サンパウロ 佐藤 孝子 わが祖父は広島なまり移民の日 ブラジリア 日高パウロ 粕汁に少し酔ひしと笑ひけり サンパウロ 畔柳 道子 枯葉散る別れのワルツ舞ふごとく サンパウロ 林 とみ代 遠き日に戻る茶話霜の宵 サルト・デ・ピラポーラ 長田美奈子 健康は無限の宝樹冬ぬくし サンパウロ 平間 浩二 日向ぼこ口許ゆるぶほど浴びて グァルーリョス 二見智佐子 再びといふ日のありや春隣 サンパウロ 近藤玖仁子
星野 瞳選 ◎ 回し飲む茶にアンデスは銀屏風 マナウス 東  比呂 ブラジルをこよなく愛し木藷汁 サンパウロ 佐古田町子 鴇色の冬霧深し大河消す パラー州ベレン 渡辺 悦子 増水のアマゾン大河月冴ゆる マナウス 服部 タネ 釜鳴りや湯気に抹茶の香も点てり サンパウロ 武田 知子 テンダルに塩漬け魚に冬の蝿 パリンチンス 戸口 久子 じっくりと旨さ貯へ冬菜畑 サルト・デ・ピラポーラ 長田美奈子 水鳥のサザンクロスの夜に眠る サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子 枯葉散る別れのワルツ舞ふごとく サンパウロ 林 とみ代 移民祭同化の顔をたたえ合ふ パラー州ベレン 渡辺 悦子 目裏に過去を浮かべて日向ぼこ アチバイア 東  抱水
間嶋稲花水選 ◎ 枯木立老いて遠くが見えて来し ポンペイア 須賀吐句志 斧振りし自信の腕で餅を搗く サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子 冬耕や醸す堆肥もゆげ立てて コロニア・ピニャール 大橋 松代 米寿には米寿の仕事日向ぼこ サンパウロ 清本 美恵 冬夕焼誇ることなく卑下もなく パラー州ベレン 渡辺 悦子 開拓に過ぎし青春木藷餅 サルト・デ・ピラポーラ 百合由美子 まだありし反骨精神帰り花 サンパウロ 鈴木 文子 父黙し母おろおろと霜の朝 ドイス・イルモンス 笹谷 蘭峯 ブラジルをこよなく愛し木藷汁 サンパウロ 佐古田町子 牛鍋や話は遂に煮つまりぬ モジ 浅海 護也 人を褒めほめ返されて冬うらら サンパウロ 近藤玖仁子

{席題部門}藤、猫の恋、接木、霞(春季一切)3句投句 投句総数 222句(投句者数 74名) 特選(◎) 4句、次点(○) 4句、他は秀作 32句 選者 4名(アイウエオ順)
杉本絃一選 ◎ 移住地の燐は遠し牧霞む セーラ・ドス・クリスタイス 樋口玄海児 ○ 優雅なるすだれの如く藤の花 サンパウロ 平間 浩二 偲ばるる恒河の俳画ジャカランダ サンパウロ 香山 和栄 老いて尚心は春の様な人 サンパウロ 渋江 安子 子育ても看取りも終り春霞 サンパウロ 小斎 棹子 藤愛でて退官悠々老の杖 サンパウロ 吉田しのぶ 放牧の続くマ州路春霞む サンパウロ 吉田しのぶ 藤満開和服に着更え写真撮る サンパウロ 角田  梢 接木する九十翁の背は厳し サンパウロ 椿  栄子 大和の血に接木の如く異人の血 サンパウロ 湯田南山子
富重久子選 ◎ 新しき蟻塚の増え牧霞む セーラ・ドス・クリスタイス 樋口玄海児 ○ 早春の中まで赤い招待状 サンパウロ 浜田すみえ 売ることに決めしシチオや藤の雨 ソロカバ 前田 昌弘 春灯下留学叶ふ旅鞄 サンパウロ 小西 成子 漂泊の夢の彼方に春霞 サンパウロ 西山ひろ子 薔薇芽接ぐ夢と希望をたぎらせて パラナ州ロンドリーナ 間嶋稲花水 藤愛でて退官悠々老の杖 サンパウロ 吉田しのぶ 接木の手いつしか耳の遠くなり サンパウロ 畔柳 道子 異文化を集め大国藤の花 モジ 浅海喜世子 花明り句会会場金屏風 サンパウロ 平間 浩二
星野 瞳選 ◎ 踏青や明日を知らねば今日を踏む サンパウロ 児玉 和代 ○ 余生てふ霞の中をさまよひぬ サンパウロ 林 とみ代 いつの世も恋は盲目猫の恋 サンパウロ 田中美智子 春月夜人親しめば皆やさし サンパウロ 大原 サチ 十キロを一気に駆けて猫の恋 ドイス・イルモンス 笹谷 蘭峯 移民老ゆ霞を食べて眠る如 サンパウロ 浜田すみえ 接木の手いつしか耳の遠くなり サンパウロ 畔柳 道子 八十の明日を信じて接木する スザノ 青柳 ます 鳴いて皆関西弁や猫の恋 モジ 藤本 千秋 渋柿に甘柿接ぎて子に残す サンパウロ 森川 玲子
間嶋稲花水選 ◎ 桃接木父より相伝せる秘訣 サンパウロ 角田  梢 ○ 快晴にひときわ弾む春の句座 サンパウロ 和田貴美子 化粧すれば女が変る薄霞 サンパウロ 近藤玖仁子 シルバーのパソコン教室山笑う サンパウロ 橋  鏡子 春月夜人親しめば皆やさし サンパウロ 大原 サチ 生かされし九十五才春の風 サンパウロ 中村たつみ 傷つけて傷つけられて猫の恋 サンパウロ 西山ひろ子 惜春や余生の日々を大切に ポンペイア 須賀吐句志 やり直しできぬ人生夕霞 サンパウロ 広田 ユキ 接木して夢ある余生となりにけり アルミニオ 伊那  宏