コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月13日付け

 全町避難中の福島県浪江町の町長が「5年は戻れない」との見方を示したことで、老人らが「それまで生きてない」とニュースで見せた落胆の表情が印象的だった。11日は東日本大震災からちょうど1年半。被災者の今まで、これからを考えれば、時の経つのは早い—とは口が裂けても言えない▼11日からUSPで原爆展『広島・長崎イン・サンパウロ』が開かれ、核の恐ろしさを伝えている。広島平和資料館の提供による写真パネルの展示があり、初日にはブラジル被爆者のメンバーによる体験談も。21日までの開催で、多くの学生の目に触れるだろう▼長崎の被爆者だったラーモス移住地の小川和己さんが4日に亡くなった。移住地内にある「平和の鐘公園」、昨年5月に落成したブラジル初の「平和資料館」の建設に尽力した。サンタカタリーナ州内の学校で体験を伝える活動も行なった。冥福を祈るとともに、その遺志が地元に留まることを祈りたい▼8月にはレジストロに続き、サンパウロでも灯ろう流しがあった。一過性のものでなく、これからも続きそうだ。いずれも反戦歌を歌ったり、灯ろうを作ることで学生らが平和を学ぶ機会となっている▼25年前の今日13日、ゴイアニア被爆事故が起こった。医療廃棄物から漏れたセシウム137で250人が被爆、4人が死亡した。今も苦しむ人々の様子を、在外被爆者を追う亜人映像作家ロベルト・フェルナンデス氏がこのほど完成させた「08:15 de 1945」で記録している。反核、反原発は長く議論されるだろうが、ブラジルの子供たちが将来考える糧を今、コロニアが作っている。(剛)