サントスとレジストロとの古い縁=仁戸田先生と、安中さん

ニッケイ新聞 2012年9月18日付け

 土井紀文セルジオさんは、2009年からサントス日本人会会長を務めている。60歳の辰年である。ブラジルの文協会長としては若い方ではないかと思うが、人望厚く会を纏め会員を引っ張っている。
 祖父の仁戸田庸吉郎さんは佐賀県出身で、1919年ブラジルに移住、レジストロの5部(ラポーザ部落)に入植した。仁戸田さんはその部落の日本語教師を10年以上務めたが、士族出身で軍人だった経歴を持つため、厳格な先生として子供達から恐れられ、また尊敬されていた。
 それは80年以上たった今、ラポーザ部落で同窓会が行われる事でも証明されている。同窓会に始まった5部の集いは、現在では新年会、母の日、父の日、子供の日、忘年会と増え、昔の親交を確かめ合っている。土井さんも何回かこの集いに参加している。
 サントス日本人会にはレジストロと縁の深い人がもう一人いる。写真店を経営している安中勉さんだ。彼の父、末次郎さんは、レジストロ入植13年〜33年のアルバム用写真を撮った人である。
 今でも鮮明な写真は、末次郎さんの素晴らしい技術に依って完成した。このアルバムには撮影者、出版社、企画者の名前が載っていないが、勉さんの話に依ると、企画・製作したのは日本国総領事館だと言う。
 1年間に約8百家族の写真を収録した。フィルムの無かった時代、重い原版を持って総領事館から日本行きの旅費をもらい、6カ月間かかってアルバムを日本で完成したと言う。
 多くの人の写真を撮ったが、本人の写真は少ない。馬に乗り林をぬけて、撮影に情熱を注いでいた時の末次郎さんの「勇姿」が残されている。真に貴重な写真である。(金子国栄さん通信)