コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月18日付け

 中国の国防予算は拡大路線であり、とりわけ近年は海軍の増強に力点を置いている。先ごろはウクライナから輸入した航空母艦を大連造船所で改造した「ワリヤーグ」が練習艦として就航したの情報もあるし、南シナ海でのフリッピンやベトナムと軍艦が向きあっての衝突寸前の暗い話も世界に流れる。勿論、日本の防衛白書も、こうした中国を脅威とし、アメリカも警戒している▼このためオバマ大統領は、アジア重視の政策に転じたし、豪州に米軍基地を新設する計画を公表し、日本をも含めた軍事同盟の強化に踏み切っているのも忘れてはなるまい。今のところは、南シナ海への凄まじいばかりの中国の侵出を止めようの目的が大きいが、これほどに中国は海洋政策に積極的である。日本の領土である尖閣諸島にしても、中国が「我が領土」と主張するのも、海軍力を背景とした海洋政策の一環と捉えるべきであり、安易な「話し合い」などでの円満解決は遠い▼石原都知事が、尖閣諸島の所有者と交渉し、東京都が買収しようとし、買収資金をと基金を設立したところ、たちまち140億円を超す寄付の申し込みがあったが、野田首相が「国有化したい」と表明し20億円超かで買い上げ、国有化したのはいいが、あの中国が黙っているわけがない。各地に反日デモが起こり、我が丹羽大使の公用車が襲われ、掲げていた「日の丸」が奪われてしまった▼襲撃の暴漢2人は、たった5日間の拘留で釈放とは—いやはや真に恐れ入りました。そして尖閣諸島沖に中国の監視船6隻が領海侵入し、日本は性懲りもなく「抗議」だけでは、いかに何でも情けない。(遯)