コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月19日付け

 日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議するデモ隊が中国・青島で日系スーパーを襲撃、同社長が「デモではなくテロ」(TBSサイト)と語っていたのを聞き、その激しさに驚いた。商品の8割が略奪され、店内の備品は破壊され放題、被害総額は25億円にも相当するとか。パナソニックの青島・蘇州・珠海3工場も反日暴徒が乱入して被害を受け操業を停止した▼常軌を逸した方向に向かっている。中国には5千もの日本企業が進出し、多くの雇用を生み、国内総生産の相当部分を支えているといわれる。それなに——との苦い思いで今報道に接する企業関係者は多い。まったく他人事ではない▼一方、パナソニック・ド・ブラジルは12日にミナス州エストレマに南米初の白物家電の拠点を開所させたばかり。移民百年という根が張った当地では「反日デモ」は起きえない。ブラジル人は喜んで箸を使って日本食を食べるし、漫画アニメも普及した▼現在、日本企業は「第3の波」といわれるブラジル上陸ラッシュを迎えている。それでも400社前後、中国の1割以下にすぎない。日本企業はもっと進出先を分散し、アジアに偏らない進出分布を考えるべきだ。その意味で、南米に拠点を持つことは有力な選択肢といえる▼治安は今一つ、経済も安定性も見せ始めたばかりのブラジルだが、地デジTV日本方式採用はもちろん、柔道大国に育った歴史からしても、単なる親日というよりは、日本を信用する〃信〃日派とすらいえないか。もし中国の景気が今後悪化し、政府が国民の不満を反日で晴らそうとしたら…。信日国の有り難味は、ますます重要になるに違いない。(深)