ブラジルへの感謝、歌に込め=北川朗久氏が夢のソロコンサート=在伯50周年を記念して=無形文化遺産の称号も

ニッケイ新聞 2012年9月20日付け

 ブラジル日本アマチュア歌謡連盟(Instituto NAK do Brasil=INB、北川好美会長)主催による『北川朗久 在伯50周年記念コンサート』が先月18日夜、リベルダーデ区の客家会館で盛大に開かれた。同連盟の元会長で、日本文化の普及や音楽活動に長年従事してきた。教え子を始め関係者や友人、安部順二、大田慶子両連邦下議、渡部一誠USP教授、木多喜八郎文協会長ら来賓を含め約700人が集まり、50年来の夢のコンサート実現と、75歳の誕生日を共に祝った。また、同コンサートはサンパウロ歴史的遺産再生院(IPH)から国益イベントとして認定されたほか、北川さんは無形文化遺産に指定された。

 開催前、控え室で北川さんは「生まれて初めてのコンサートでちょっとあがっている。精一杯感謝を込め、持っているものを全て出し切り、死ぬつもりでやらせてもらう」と意気洋々と語った。長年音楽活動に携わってきたが、ソロコンサートは今回初めて。人生で心に残った名曲21曲を詰め込んだ。
 アヴェ・マリアの演奏と共に、気迫をみなぎらせて登場。1部では太く声量のある歌声を会場に響かせながら、ブラジルへの感謝を込めて作った「アリガトウ・ブラジル」や「平城山」などを熱唱した。
 続く2部では、エルヴィス・プレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」やナポリ民謡「オー・ソレ・ミオ」など50〜60年代の世界の名曲を歌い上げ、3部では「再会」などで、家族や人々との出会いと別れを情緒豊かに表現した。
 第4部では、ラジオ局に勤務していた頃に番組に迎えたという歌手・美空ひばりさんの「川の流れのように」など名曲3曲を熱唱、観客は立ち上がって大歓声と万雷の拍手を送った。
 「憩の園」など複数の福祉施設に継続的な支援活動を行なったほか、日本文化の普及にも努めたとして、来場したサンパウロ歴史的遺産再生院のエマヌエルフォン・L・マッサラニ総裁が北川さんを無形文化遺産に指定、認定書を授与した。
 北川さんは「本当にありがとう」とただ感謝の言葉を繰り返し、会場から大きな拍手が贈られた。
 「古い知り合いで指導もしてもらった」という井川ルシアさん(64、二世)は「今日みたいに先生が歌うショーは滅多に見られない」と大いに楽しんだ様子。高野ヴァルテルさん(65、三世)も「特に最後のショーが素晴らしかった」と笑顔で話した。

■プロフィール きたがわ・あきひさ

 1937年大阪市生まれ。62年に渡伯し、ラジオ局の番組担当や日系初の連邦議員・田村幸重連邦下議の秘書として活動後、88年にエスペランサ婦人会歌謡教室のカラオケの指導講師に。日伯音楽協会会長を15年、NAKブラジル本部長を16年務めた。ブラジル紅白歌合戦の創始者。毎年支援歌謡祭を行い、日・非日系の両福祉団体に寄付を行なっている。