邦字紙は〃運命共同体〃=老ク連で支援映画上映会

ニッケイ新聞 2012年9月20日付け

 ニッケイ新聞主催、老ク連と名画友の会共催で、在伯邦字紙の支援を趣旨に企画された映画『ガブリエラ』の鑑賞会が16日、老ク連会館で開かれ、約30人が会場を訪れた。
 原作の『ガブリエラ』(Gabriela, Cravo e Canela、1958年刊)は、ブラジルを代表する作家の一人で、多くの作品が世界中で翻訳されているジョルジ・アマード(1912〜2001)の代表作。新しい文化と古い考え方が入り混じる、カカオ景気に沸く1900年代初頭のバイーア州南部の町・イリェウスが舞台だ。現在本紙2面で、佐東三枝さん(87、山形)=サンパウロ市在住=による翻訳作品を連載している。
 老ク連の五十嵐司会長は上映前のあいさつで、「私たちは〃新聞キチガイ〃で、運命共同体のようなもの。ないと一日が始まらないほど、毎日楽しみにしている。読者の減少で厳しい経営難に直面している新聞社を支援し、読者の我々と新聞社の人達が交流する場を作りたいと思った」と企画の経緯を説明した。
 続いて挨拶した本紙の高木ラウル社長は謝辞をのべ、昨今は海外の邦字紙が相次いで廃刊に追い込まれているものの、今後も発行を継続していきたい考えを示した。
 佐東三枝さんは日伯毎日新聞、JETROなどで長年にわたり翻訳の仕事をしてきた。72歳で定年退職後、10年余りかけて完成させた『ガブリエラ』の翻訳は、佐東さんの集大成ともいえる作品だ。
 「唯一人並みにできる翻訳で自分の最後の仕事をしたかった。バイーアの空気が色濃く残るこの作品を、日本語にしてコロニアの人に読んでもらいたいと思い、途中で中断したりしながらも楽しみながらやってきました」と作品にかけた思いを語った。
 佐東さんによるあらすじの紹介の後、来場者は100分ほどの作品に見入った。
 映画は1983年に制作され、監督はブルーノ・バレット、主人公のガブリエラ役はブラジル人女優のソニア・ブラガ、恋人のナシブ役には20世紀のイタリアを代表する俳優、マルチェロ・マストロヤンニが演じる。
 原作同様、イリェウスでバールを経営するナシブが、新しく雇った北東伯難民の料理女・ガブリエラと恋に落ちるという物語。原作ではアラブ人のナシブが映画ではイタリア人であるなど若干原作とは異なる部分もあるものの、アントニオ・カルロス・ジョビンが音楽担当として参加しており、当時の北東部の美しい自然や人々の様子がよく表現されている。