コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年9月28日付け

 ブラジル経済の潮の変わり目か——。24日のブラデスコのクレジットカード利子半減の発表は、他主要銀行にも波及し朗報として歓迎された。その裏で政府は伯銀と連邦貯蓄銀行に計210億レアルのクレジット資金注入を21日に発表していた。この二つのニュースは明らかにコインの裏表だ▼過去最高の借金水準にある国民に、さらに借金をさせて国内総生産(PIB)を押上げる決断を政府がしたことが透けてみえる▼マンテガ蔵相いわく「欧州はあと3年不況」だし、米国は不透明、中国も停滞。輸出頼みのPIB増に見切りをつけ、国内消費増に賭けるしか道はないと判断したようだ。今までは健全な金融政策だったが、ここから先は〃諸刃の剣〃の世界かもしれない▼本来、消費を増やすには「国民の雇用増=収入増」が王道だ。今も雇用増だが、新興国の目標PIB年4%増には足りない。それなら借金させて消費を前倒しさせろとの発想だ。PIBは上がるが借金地獄も大きく口を広げた。国民の約9%が完全文盲だから難しい利子計算ができるのはどの程度か…▼すでに過重債務者は激増しているので、これ以上借金させるにはカード利子を下げる必要があり、銀行に圧力をかけて半減させた。元々年利323%という世界的超高利だったから半減してもまだ高い。と同時に、庶民向けクレジットの強化を政府系銀行が先導するよう巨額資金を注入した。これは明らかに一組の政策だ▼これから年末商戦が本格化する。庶民はカードの使いすぎに要注意だ。「五輪までは大丈夫」との風説は一種の目くらましにすぎない。過重債務の我慢くらべの時期は、次の大統領選までかも。(深)