コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月1日付け

 ジウマ大統領とハダジ次期サンパウロ市長には幾つか共通点がある。例えば移民の子供であること、本格的な選挙を未体験だったのに大敵セーラに競り勝ったこと、そしてルーラ大統領の秘蔵っ子であった点等だ▼サンパウロ市長選挙ではメンサロン裁判がどう影響するかが判断の分かれ目だった。後見人たるルーラは「一般庶民はパルメイラスが2部落ちすることの方が心配」だと早々に見抜き、メンサロンにまったく関係しない新人ハダジを候補に据えた。「経験がない」ことで受ける批判より、スキャンダルで足をすくわれる方が怖いとルーラはよく知っている▼ブラジル民の投票行動の特性として、「党でなく、個人に入れる」ことも見抜いていた。実際、メンサロン裁判は特定の個人が裁かれたのであって、ハダジとは関係ないというのが有権者の感覚だった。だからセーラが同裁判の悪印象をハダジに被せようと努力したが効果を上げなかった▼でも、おそらく同裁判はルーラの方を直撃した。かつてのルーラ政権の中枢が軒並み有罪にされたが、不思議なことに、中心にいたはずの彼だけが生き残ったからだ▼もし2年後にルーラが再び大統領選に出れば、そのことを蒸し返されるに違いない。今回はルーラの存在が〃楯〃のような役割をして、ハダジに悪影響が伝わらない構図になっていた。そのせいで自分が次の大統領選に出馬する道は立たれたかもしれない▼ルーラはジウマ政権2期目の後を見据えてハダジを育てているのだろう。自らの肉を切らせて宿敵セーラの骨を断ったともいえる。セーラは自らの出馬にこだわったが、ルーラは自らを楯にして後継者を育てた。この違いは大きい。(深)