コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月20日付け

 サンパウロ市と近郊を中心とした軍警の殺害が続発している。今年になってから現役と退役者が90人以上もが殺されており、緊迫した暗雲が街をすっぽりと包んでいる。隠しカメラが撮影したものによると、銃殺のやり方も数人がかりで銃を乱射する凄まじさであり、さながらハリウッドのギャング映画を観ているの錯覚に追い込まれ、善良な市民らも呆れ果て茫然としている▼それでも勇気ある庶民らは「暴力反対」のデモをしたりしているが、平和で穏やかな暮らしは遠い。オニブス焼き討ちも広がり、サ・カタリーナ州にも飛び火し、禍禍しい悪の広がりは尽きない。パライゾポリスへの麻薬取締りの強化には600軍警が投入され、装甲車などの重装備であり、もはや内戦に近い。もう、リオの騒乱を笑いながら語るような雰囲気はとっくの昔に消えている。将に—サンパウロは犯罪都市になった▼事の発端は警察の麻薬対策であり、これに抵抗するPCC(州都第1コマンド)が組織に「軍警殺害」を指示したのが始まりとされる。逮捕され刑務所に収監されている組織の幹部が秘密に持ち込んだ携帯電話で命じていると見られ、州政府は連邦と連携し、これらの首脳らを連邦刑務所への移送が決まったけれども、州政府は刑務所の管理についても再検討の必要があるのではないか▼第1コマンドは約4千人の犯罪集団と推察され麻薬取引を軸にしているが、麻薬生産地への影響力も強く、国内でも勢力圏を拡大している。こうした動きを見れば、サンパウロだけでの解決は難しく、ブラジルの警察を挙げての取り組みが欠かせない。(遯)