コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月22日付け

 先週、日本から帰国した。「時差ボケは大丈夫?」との恒例の質問にいつも困ってしまう。自慢にもならないが、機内でよく眠れるせいか、時差ボケになったことがない。症状すらよく分からないのだ。と言うと「年齢を重ねると分かるよ」と返される。楽しみにしているのだが▼ところが今回、往路で眠れなかった。「これで時差ボケとやらを体験できそうだ」とワクワク。しかしそれが夢だった。実際はグッスリ、目が覚めたのは日本到着1時間前だった。我ながら少々呆れた。復路もよく眠れた。これが子供なら「寝る子は育つ」「果ては大物に」と親は目を細めるのだろうが、当方神経が数本ないまま育ったらしい。月曜日に「時差ボケは…」「…いえ全く」と挨拶を交わすや否や「黒人の日」。これでは休み疲れしてしまうわい、と思いつつ午後3時にまどろんだ。起きて時計を見ると、翌朝午前7時半▼何と16時間半も寝ていたことになる。「若くて体力があるから眠れるんだよ」と一笑に付されそうだが、どうも腑に落ちない。一度起きて食事でもしたのではないかと思うのだが、部屋の形状は寝たときと同じ。意識が埒外にあるというのは恐ろしい。これで手が血でベットリ…となれば、安物のテレビドラマだ▼しばし茫然としていると、朝だというのに段々と外が暗くなってくる。まるで世界の終わり—眩暈のような感覚に包まれていると、それもそのはず起きたのは午後7時半だった。単なる長めの午睡だったわけだ。何故朝だと勘違いしたのだろう。意識がまだ追いついていないのか。これも時差ボケの一種で、歳も取ったということなのかも知れない。(剛)