コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年11月29日付け

 紙面づくりの仕事柄、ゆっくりと記事を読む時間はないのだが、コロニアの未来に向けた一言一句はやはり立っている。そんな11月の言葉から▼「プロとして生活したい」。丹下太鼓道場に通い日本で研鑽を積んできた小林翼さん(28)。「ボランティアだから趣味だから」で低迷するコロニア芸能。プロが食えてこそ一定のレベルと言えるのではないか。やる気に期待▼「家族の繁栄につながるように—」。移民の多くは、人生経験を墓場まで持って行ってしまう。ルーツの喪失がどう作用するかは知らないが、このたび自分史を書き上げた沖縄県人きっての事業家、上原武夫さん(77)の思いに同感する人も多いのではないか▼「30年来の悲願が叶ったが、これからのご奉公が大事」。創立50周年で大屋根を完成させた日教寺のコレイア教伯さん。5年前に大阪の寺の威容に魅せられて、資金集めにその大きな体をまい進させてきた。非日系ということで苦労もあったろうが、まずはお疲れさまと申し上げたい▼「希望者がいる限り続けたい」。04年からデイサービスを続けている広島県人会の「もみじの会」。今年の集まりでも笑みが溢れた。「参加者は減る一方だけど…」と自らを奮い立たせる主催側の橘愛子さんによれば、参加者のみならずボランティアも大募集中。(同県人会=11・3207・5476)▼「遠いところありがとう」。日伯交流で交わされるこの言葉も意味合いが少々違う。県連「東北被災地応援ツアー」。参加者らは現地での歓迎に胸を熱くしたようだ。ただ支援事業に繋がってこそ。言葉の重みを忘れまい。(剛)