帰伯者との連係で発展へ=ブラジル日本文化福祉協会会長 木多 喜八郎

ニッケイ新聞 2013年1月1日付け

 ニッケイ新聞愛読者の皆様、あけましておめでとうございます。
 旧年中はブラジル日本文化福祉協会に対しまして温かいご理解ご協力を頂きまして誠にありがとうございました。ブラジル日本文化福祉協会理事会はじめ関係者一同、新たな気持ちで皆様のご期待に沿うよう邁進してゆく所存でございます。本年も引続き一層のご支援をお願い申上げます。
 今年の干支は巳年、しっかりとした信念と冷静な判断を持ち探究心と情熱が特徴と記述されていますが、ブラジル日本文化福祉協会は多くの皆様の参加を仰ぎ、文化交流を基盤とした日伯両国の親善・友好関係の強化促進に向けて、この国の発展と日系の更なる向上を目指して次なる一歩を踏み出す所存でございます。
 日本移民は戦前戦後を通じて約25万人が海を渡ってブラジルの地に移住して来ました。現在日系ブラジル人は通称150万人と言われ、60パーセント以上の混血社会となり、その速さは社会人類学の研究上でも特異な存在として表れています。
 移民として来て、その国に同化することは、自然の理であり当然の成り行きであります。但し問題となるのは、日本の伝統・風習を何処まで守り維持してゆくかにあります。
 日系人の混血率が著しく伸びていく過程で、三世、四世の時代に移行していきますと、日系団体の必要性が著しく低下し、近い将来には純粋の日系人だけの集まり、文化団体は存在し得ないと危惧され、その存続のため最も重要な要素は日本文化の伝承であると思います。
 1980年代にはじまった出稼ぎブームに乗って約30万人の日系ブラジル人が日本に向かいましたが、日本の経済不況により現在ではそのうちの約12万人がブラジルに戻って来たといわれています。その数はブラジルの日系社会の一割弱に相当するものですが、その人たちは日本文化、伝統を体験してきた新しいブラジル日系社会の一員でもあります。
 ブラジル日本文化福祉協会では日本文化伝承の重要さに重点を置き、色々な活動を展開しています。純粋な日本伝統文化を残そうと努力している日系社会の人々と、日本の伝統風習に浸って帰国した人々が結びついたとき、ブラジル日系社会の新しい将来像が浮かびあがってくるのではないかと思っています。
 更に、若人交流事業を基盤とした日伯交流の促進に、研修生のような形で日本人を受け入れることも必要だと思います。これからは、より多くの日本の若人がブラジルでの生活を体験できるシステムの構築が早急の課題ではないかと思われます。そうすることにより、インターネット時代における新たな日伯関係の将来像が見られ、より良い成果をもたらすものと確信しています。
 また、文化交流を基盤とした貿易の促進も日系諸団体の更なる発展の起爆剤となるだけではなく、ブラジル社会における日系諸団体の存在意義を益々高めることになります。世界の舞台で躍動しているブラジル社会の構成分子として、今後、日系団体及び日系社会が、真の日本文化伝承と普及に向かって最善を尽くし、日伯両国の持続可能な経済・貿易関係の構築にも微力ながら参画して参りたい所存でございます。
 そのためにも、今後、若人の交流事業の継続と更なる拡大が必要であり、近い将来の両国の親善関係にも力強い絆が生まれ相互の信頼関係が強固なものになると確信しています。
 末筆となりましたが、ニッケイ新聞愛読者の皆様のご健勝と、ニッケイ新聞社の更なるご発展を衷心よりお祈り申上げ年頭の挨拶と致します。