サックスプレーヤー 渡辺貞夫さん=新アルバムの録音で来伯=7日にはサンパウロ市でライブも

ニッケイ新聞 2013年1月5日付け

 「ナベサダ」の愛称で親しまれる世界的ジャズサックスプレーヤー、渡辺貞夫さん(79、栃木)が昨月23日に来伯、新アルバムに収録する「ブラジルへのサウダーデを込めた全10曲」のレコーディングを行った。
 歌手のファビアーナ・コッツァなど当地の音楽家6人と30日、サンパウロ市のNACENAスタジオでレコーディングを終えた。CDの販売予定は5月以降。帰国前の7日は、午後9時から、サンパウロ市レストランでライブも行う。
 「アフリカには年中行く」というほどダイナミックで原始的なアフリカ音楽を愛する渡辺さんは、「その影響を受けたブラジル音楽のリズムや独特のメロディーに惹かれた」という。これまで約10回来伯し、アルバム2枚を制作している。
 1965年、米国のゲイリー・マックファーランドのヒットアルバム「ソフト・サンバ」の記念ツアーに参加した際、「ブラジル65」を収録中のセルジオ・メンデスらのグループに出会い、ブラジル音楽に興味を持った。
 それから3年後、当時サンパウロ市でクラブ「一番」を経営していた故・小野敏郎さん(ボサノバ歌手小野リサの父)に招かれ来伯。毎晩現地の音楽家と交流する中で、ブラジル音楽に深く魅了されたという。
 出身地である宇都宮市の青少年を中心に、ブラジル打楽器の演奏も指導する。「アフリカ回帰」をテーマに太鼓を使った演奏をするバイーア音楽のグループ「オロドゥン」に出会い、「これなら日本の子どもにもできるかもと思った」と語る。
 95年、同県で開催された国民文化祭に出演を決意。「オルドゥンのメンバーも呼び寄せて、地元の中学校で1年間かけて練習した」。以来、自らが設立した「エスコーラ・ジャフロ」で約80人の青少年を育成し、日本各地で公演も。
 2005年の愛知万博では、渡辺さんプロデュースによる世界5カ国の子どもとの競演「リズムワールド」にも実現させている。
 渡辺さんは「ブラジルは特別な国。また来たいですね」と笑顔を見せ、「今度は子どもたちをサルバドールに連れてきたい」と抱負を述べた。
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 ライブ会場となるレストラン「Sao Cristovao」の住所=Rua Aspicuelta, 533, Vila Madalena、電話=11・3097・9904。入場料22レアル(軽食付)