神奈川大・常民文化研究所=研究者らが移民の調査に=戦前の生活に焦点当てる

ニッケイ新聞 2013年1月12日付け

 移民研究の予備調査のため、神奈川大学日本常民文化研究所から佐野賢治所長(62、静岡)をはじめ、森武磨(67、岡山)、内田青蔵(59、千葉)、泉水英計(47、千葉)さんら3人の所員が5日に来伯した。
 同研究所は漁業史と民具研究を柱とし、日本民衆の生活・文化・歴史を多角的に研究している。主に日本と東アジアを対象としてきたが、4年前に研究を国際化するべく、同研究所を核とした国際常民文化研究機構が設立された。
 今回の研究テーマは「ブラジル日系移民の民俗学的研究」。佐野所長によれば、「これまでブラジル日系移民に関しては、アイデンティティ研究が主で、民族・移民学的研究はなかった」。神奈川大と学術協定を結ぶサンパウロ総合大学の森幸一教授が事業の存在を知り、話を持ちかけた。
 一行は12日まで滞在し、文化財となっているレジストロの移民住宅やモジの製茶工場「カザロン・ド・シャー」、文協所蔵の史料倉庫等を訪れ、現存する農具も含めた民具を見学、戦前を知る日本・日系人から聞き取り調査も行っている。
 建築が専門の内田さんは「同化が早かったのか、畳の生活がなくてびっくりした。土着の人との住まいも比較してみたい」と語った。
 近代農村史が専門の森さんは「聞き書きでないと残らない歴史を記録したい。戦前を知る世代が減っている今が最後のチャンス」と意気込んだ。
 佐野所長は「民家の道具をかきだして調査できれば、生活の変遷を描ける。地元で史料館が出来るきっかけにもなれば」と語り、本格的調査への熱意を見せた。
 なお、佐野所長らは「戦前から残っている民具、文書、日記や会報、住まいを持っておられる方は、気軽に連絡して頂きたい」と呼びかけている。
 連絡先は泉水さん(sensui-hidekazu@kanagawa-u.ac.jp)、森さん(電話=11・3091・2426、Eメール=kmori@usp.br)まで。