コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年1月25日付け

 椎名誠といえば、多くの旅行記や冒険談をものにしている有名作家だが、週刊文春10月25日号の彼のコラムはあまり頂けないものだった▼軽い文体で中国をケナす主旨なのだが、《まず国際感覚でいうと、その国の「気性」は入国や出国の際のイミグレーションでだいたいわかる》とし、中国のそれは高飛車だが《ラテンの国などはイミグレーションの役人が鼻唄なんか歌っていて緊張感のカケラもない》と対比させる。ラテンの一角を占めるブラジルの入管では、少なくともコラム子は緊張しっぱなしだ▼中国では従業員が信用できないから、店で売り子にお金を直接払うことが出来ず、わざわざ会計で払って、後から商品を受け取る。それをさも特殊な事例のように書いているが、当国でもまったく同じだ▼特に気になったのは《その国の「民度」は車の走行マナーでだいたいわかるが、中国は世界でも最低部類に入るだろう。とにかく「意地が悪い」。車間を詰めてできるだけ他車を入れないようにするし、無意味にスピード競争をする》と列記する部分だ。ならば当国も限りなく「世界でも最低部類」に入るのではという気がする▼彼は何十カ国も旅行しただろうが、途上国や新興国に長期滞在したことはないだろう。貧困層がわずか10年程度で中産階級に大量に移動している国で、マナー云々いうこと自体ナンセンスだ。別に中国を弁護する気はないが、先述の状況が世界でも特殊とするのは、先進国の驕りをさらけ出していないか。先進国十数カ国の人が「世界でも最低部類」と思っているかなりの部分は、実は先進国以外の百数十カ国の〃常識〃かも。(深)