コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年2月22日

 優秀な同時通訳として有名な竹田アルーダ佑子さん(長野)が働き盛りの65歳で亡くなったのは誠に残念だ。夫はブラジル外務省の現役大使で、駐日大使館勤務時代に、日本留学中だった竹田さんと知り合い結婚したとか▼通訳仲間の二宮正人弁護士によれば、竹田さんはUSPドイツ語学科を卒業し、成績優秀なために学究生活を続けるように教官から薦められたがそれを振り切って留学し、パリでは同時通訳の養成学校にも通い、日英ポ語の同時通訳としては世界的なレベル。もちろん公証翻訳人だった。さらに仏語、独語も堪能でまさに語学の達人だった▼そんな立派な経歴はおくびにも出さす、誰とでも普通に接する人だった。本業に専念する方がはるかに割がいいに違いないが、日伯文化連盟で20年ほども翻訳講座をやり、後進の育成にも尽力した▼優秀な通訳といえばルーラ大統領(05年当時)訪日に同行した村山サンドラさんが有名だ。前述の二宮さんも含め、様々な専門分野の用語を使いこなす国際的レベルに達した日ポ通訳者はそう多くない。今後の日伯関係を考えたとき、優秀な通訳者は不可欠の存在であり、神戸保さんら次世代も徐々に育ちつつあるが、どれだけいても足りない▼翻訳なら『宮本武蔵』の後藤田礼子さん始め、大原毅さん、山内淳さんらも健在だが高齢化は避けられない。優秀な翻訳者、通訳者は日伯交流の〃インフラ〃だ。デカセギ帰伯子弟の多くは日ポ両語とも会話はできても、読み書きは中途半端なレベルだと聞く。ぜひ真剣に翻訳通訳修業に取り組んでもらい、未来の日伯の懸け橋になってほしい。(深)