コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年2月23日

 日本の農業は苦しい。農村には高齢者ばかりが目立ち、農業就労者の平均年齢が65歳、35歳未満は僅かに5%。日本の人口の3%にも満たない260万人のお百姓さんが額に汗し野菜やコメを作っているが、それでも食料自給率は40%であり、葱やほうれん草も輸入し、牛や豚も鶏の肉までを外国から買っている。そして—コメも800%の関税で保護され世界一高い「ご飯」を食べている▼これに加えて農家1戸当たりの農地は1・2ヘクタールと狭い。これは豪州の1862分の1、米の99分の1だそうだから—どんなに知略を絞り機略をはかろうとも、とてもの程に勝ち目はない。しかも、日本のGDPに占める農業の割合は、驚くなかれ1%と低い。と、寂しくも悲しい話ばかりが次々と飛び出してくるが、それでも、日本の政府は「農業を守れ」の合言葉で保護政策を実施してきた▼だが—どんなに保護を強化しても、農業の現実を直視すれば、GHQ(連合国軍総司令部)の「農地改革」と同じような革新的な政策がなければ、国際的な競争には勝てない。先の産業競争力会議で安倍首相は「大胆な農業対策を」と語り、民間委員の竹中平蔵慶応大教授は「農業へ企業参加を認めよ」と表明し活発な議論となったようだ▼中でも、これも民間委員から10年から15年後には、農家の平均耕作面積を「本州で50ヘクタール、北海道は100ヘクタールにすべきだ」と提唱している。この耕地面積の拡大こそが、日本農業の将来を決するし、今、話題になっているTPP(還太平洋経済連携)も決して恐れる必要はなく怖くもない。(遯)